「糖尿病治療」の深い闇 桐山秀樹著
現代医学では完治しないとされる糖尿病。その数は増え続け、予備軍まで入れると全国で2210万人にものぼる。その響きから「尿に糖が出る」病気のような軽い印象をうけるが、実際は「インスリン抵抗性による身体全般の代謝異常と高血糖による血管内皮の障害病」ともいえる恐ろしい病魔だ。
その治療にはカロリー制限やインスリン注射が用いられているが、それは筆者に言わせれば「のんびりと極めて効果の薄い治療」にすぎない。本書は既存の糖尿病治療にはほとんど頼らず、異端視されている糖質制限食で糖尿病からの脱出に成功した著者の実体験をもとに書かれている。
著者はノンフィクション作家であり、もともと医療や栄養学の専門家ではない。それが逆に本書を読みやすいものにしている。タイトルこそセンセーショナルだが、常に患者目線に立ちレポート形式でまとめられた内容はわかりやすい。著者は57歳で糖尿病にかかり、年下の医師に頭ごなしに叱られながらカロリー制限をするうちに、一冊の本に出会う。糖質制限食の提唱者で、自らも糖尿病患者である江部康二医師の著書だ。
従来のカロリー制限食はカロリー計算が複雑で、とても長く続けられるものではない。一方、糖質制限食はやりやすく、続けやすく、シンプルなものだ。糖質は、ごはんやパンなどの炭水化物、果物、砂糖に多く含まれる。糖質を摂らないことだけに気を配れば、あとは肉や魚類などはいくら食べても問題ない。アルコールも焼酎やウイスキーなどの蒸留酒、醸造酒でも赤ワインなら飲んでもOKだ。
たとえば、牛サーロイン200グラム(約1000キロカロリー)を糖尿病患者が食べても、糖質含有量は1グラム以下なので、血糖値は3ミリグラムも上昇しない。カロリー制限食では真っ先に禁止される肉類だが、血糖値を上昇させるのはタンパク質や脂質ではない。糖質なので大丈夫なのである。
糖尿病は患者がやる気になりさえすれば、自分でコントロールすることができる病気であると断言している。アメリカでは選択肢の一つとして認められている糖質制限食が、なぜ異端視されているのか。そこには医療・製薬業界の利権があり、専門医にとっては今までの治療を否定されるという矛盾も含まれている。