近鉄5800系「ロング・クロス転換シート」の先駆者 「スムーズな乗降」「乗り物本来の姿」の両立狙う

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新仕様を取り入れる一方、1981年登場の1400系以来となる前面の窓の上の前照灯周りにステンレスの飾り板、中央の貫通扉上に行き先表示器、窓の下の左右に列車種別灯・後部標識灯、というスタイルは5800系で最後となった。

近鉄5800系 通常塗装
奈良線を走る通常塗装の5800系。マルーンレッドとシルキーホワイトのツートンカラー(記者撮影)

次世代の近鉄一般車両として2000年以降に登場した5820系などの「シリーズ21」と呼ぶ系列は前面がブラックフェイスで、側面は「アースブラウン」と「クリスタルホワイト」のツートンカラーに「サンフラワーイエロー」のラインが入ったデザイン。1986年に登場した3200系以降の「マルーンレッド」と「シルキーホワイト」の塗り分けは途切れることになった。シリーズ21もローレル賞に選ばれている。

関東の私鉄各社にも拡大

一方、ロングシート・クロスシートの両方に転換できる座席は、東武鉄道「TJライナー」、西武鉄道「S-TRAIN」、京王電鉄「京王ライナー」といった関東の大手私鉄各社が有料座席指定サービスに用いる車両にも広がった。通勤・帰宅時間帯はクロスシートで着席ニーズを取り込み、それ以外の時間帯はロングシートで運用することが多い。

近鉄 8A系
新型一般車両「8A系」。側面は赤と明るい白の塗り分けで、L/Cシートを採用した(記者撮影)

近鉄にも2024年10月、奈良線などに「L/Cシート」を採用した新型一般車両「8A系」がデビュー。先頭部は「八角形をモチーフにした特徴的かつ斬新な形状」(同社)だが、側面は赤と明るい白の新たな塗り分けで、従来の一般車両の「近鉄らしさ」を残したデザインとした。

8A系のシート開発にも携わった同社技術管理部の花岡靖浩さんは「5800系の登場当時はまだ他社にない先進的な座席で、一般車両にここまでお金をかけた例もなかったのではないか。8A系では座り心地がはるかによくなっています」と話す。

2025年度からは大阪線、名古屋線、南大阪線にも新型車両を導入する。名古屋線ではシリーズ21が投入されなかったため、それまでは5800系が一般車両で“最新”の形式ということになる。近鉄沿線が久々の新型一般車両の登場に盛り上がる中、その特徴の1つであるL/Cシートの先駆者となった5800系に改めて注目してみるのもよさそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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