なぜ子どもの性的虐待は、闇に葬られるのか 親や近親者は必ずしも助けてくれない

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重要なのは、被害の話が出始めたときに、それを聞いた身近な大人が、慌てたり驚いたりして、アドバイスをしすぎてはいけない、ということです。被害者は自分が責められているような気がして、言いたいことを隠してしまうからです。最初は自分の意見は控えて落ち着いて共感しながら聴くことが大切です。私自身も聴き方で失敗した経験があるので、今でも気をつけています

レイプ被害者に落ち度があると言われる実態

被害を訴えてまた取り消すこともあります。説明はわかりにくいことも多い。うまく言葉にならないことの奥に何があるのだろう、と考えながら聞くことが大事です。性虐待、性被害は起こりうる、という前提で子どもたちを見守らないと見逃してしまいがちです。

周囲の認識の問題には、「完全な被害者」を求めること、があると思います。「断れたのではないか」と被害者に落ち度があったかのように言われることが多すぎます。本当は嫌だったのに、怖くて乗り気のふりをしてしまった、ということもありますから。今回は子どもが被害者になる性虐待、性被害を取り上げましたが、性被害は老若男女誰にでも起こりうることは、あまりに知られていません。

弁護士の寺町東子さん

寺町:植田さんと同じく「被害者は悪くない」という認識を、もっとしっかり周囲が持つ必要があると思います。

また、性暴力が消費されている現状は大いに問題です。AVには暴力的なものが多いですし、10代の少女向け漫画は妄想が行き過ぎています。「壁ドンがかっこいい」という女の子の認識も問題がありますが、デートDVとしか言えない関係が普通のこととして消費されていますよね。

植田:男性に強く出てほしいとか、壁ドンを本当に好む女性もいると思いますが、確かに「許されないこと」と「好みの問題」の間で、判断がおかしくなっているところはありますね。

寺町:現実社会で犯罪に当たるようなことはダメなのです。もちろん、表現の自由は大事ですが、犯罪を恋愛として描くことはやめてほしいですね。

――課題が山積みですが、性虐待、性暴力の被害者が救われるために、何が必要ですか。

寺町:第1に、周囲が被害者の話を聞き、受け入れること。「あなたが悪いんじゃない」ということですね。

第2に医療です。これは、施設の問題と経済支援の問題、両方あります。性被害を受けた人はPTSDになる率が高いのですが、被害届を出して「被害者」にならないと、犯罪被害者支援法の対象にならず、自費で通院しなくてはいけません。特に慢性期のPTSDに効果があるとされるprolonged exposure法は、多くは臨床心理士があたりますが、自費では1時間1万円もかかります。自腹で受けるのはきついですよね。

そこで、全国の少なくとも県庁所在地に性暴力被害者が駆け込めるワンストップセンターを作り、経済的負担なく被害直後には緊急避妊薬を渡したり、万が一妊娠していたら堕胎手術を受けたり、トラウマ治療を受けられる態勢を作ってほしいです。本当に困っている子に医療が届かないことは大きな問題ですから。

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