立憲・野田代表の「政権奪取」戦略の"落とし穴" 刷新感重視の新体制も、程遠い「ノーサイド」

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野田氏は2011年9月から2012年12月の自公政権復活まで、旧民主党政権で3人目の首相を務めた。その中で、財務相経験者として、当時の野党だった自民、公明両党との間で、政権公約(マニフェスト)になかった消費増税を推進し、増税に反対する小沢氏らの反発によって党分裂を招き、2012年11月中旬の党首討論で衆院解散を宣言し、それを受けての12月中旬の衆院選で大敗し、退陣に追い込まれた。

そうした「過去」も踏まえ、野田氏は代表選勝利後、メディア出演などで「本気で政権をとりにいく」と繰り返す。その野田氏が最大のアピールポイントとしているのが、2022年10月に衆院本会議で行った故安倍晋三元首相の追悼演説だ。その中で野田氏は、生前の安倍氏が2人だけの密談で野田氏に伝えた言葉として「自分は5年で返り咲いた。あなたにも、いずれそういう日がやってくる」を紹介、議場をざわめかせたことが念頭にあるとみられる。

「野党1本化」や国民民主との「合体」も困難

ただ、野田氏にとっての“最大の弱点”は「突然の衆議解散断行で、民主党政権を終わらせた」(立憲若手)ことでもある。党内ではいまだに「絶対許せない」(同)などと不信感を漏らす議員は少なくない。それだけに、野田氏が次期衆院選までに、選挙戦略や掲げる政策などで党内の一体化に失敗すれば、その時点で野田新体制への批判が噴出しかねない。そうなれば「政権奪取」どころではない事態に陥る。

また、「政権奪取の最大のカギは野党の一本化」(選挙アナリスト)だが、日本維新の会を筆頭に国民民主党、れいわ新撰組、共産、社民両党まで数多くの党との連携は極めて困難とみられている。これら各党は、それぞれの選挙戦略や基本政策もバラバラで「話し合いの糸口すらみつからない」(政治ジャーナリスト)のが実状だからだ。その一方で野田氏は、旧民主党時代からの“同根”でもある国民民主との「合体」も視野に入れているとされるが、「選挙協力での共産党排除を明確にしない限り無理」(国民幹部)との見方が支配的だ。

さらに、立憲民主の政策担当者の多くが懸念を示すのが野田氏と財務省との緊密とみられる関係だ。野田氏は首相在任中の2012年8月に民主、自民、公明3党による「社会保障・税一体改革に関する合意」をまとめたが、「社会保障の財源としての消費税率引き上げを巡り、裏で財務省が動いた」(自民幹部)との見方が根強いからだ。この合意を受け、消費税率は5%→8%→10%と段階的に引き上げられたが、「それが日本経済のデフレを加速させた元凶」(経済アナリスト)との指摘があるだけに、政権奪取に成功した場合の「野田首相」の財政運営を不安視する声も少なくない。

そうしたことから、現在の政界の構図を踏まえれば「いくら国民の自民党離れが拡大しても、首相再登板への道筋は見えてこない」(政治ジャーナリスト)というのが、野田立憲民主新代表の置かれた厳しい立場といえそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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