高級ホテルの顧客が通う「銀座の高級寿司」の実際 「銀座寿司幸」が140年繁盛している納得の理由

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丸ビル店は若手が人前で寿司を握る修業の場にもなった。「銀座寿司幸本店」ほどの老舗となると、板前さんたちも、20~30年クラスという人がざら。そうすると、若手はなかなか、客前で握る経験ができないからだ。

握る技術だけなら1人で鍛錬することも可能だが、的確に手を動かしながら、言葉巧みに客あしらいをする、これは、経験を積まなければできることではない。また、人間というものは、任されればやる気にもなる。杉山氏曰く、そうした“ディスポーザー的”な店は本店を守り、潤滑に回していくためには必ず必要なのだという。

コロナ禍を救ったのは「インバウンド」

リーマンショックや東日本大震災を乗り越えた飲食店を次に襲ったのはコロナ禍である。ところが、これを救ったのが意外にもインバウンドだという。

杉山氏のもとには20年ほど前から、香港、シンガポール、台湾など、多くのアジアの大富豪が訪れるようになっていたのである。「口コミですか?」とその理由を尋ねると、まずは香港の大富豪と仲良くなったのだそうだ。

インフルエンサーであったその彼が、セレブ仲間に次々と同店のことを薦め、気づいたら自家用飛行機で来るようなインバウンド客が何人もいるような状況になっていた。

そこで、杉山氏は店のスタッフたちに英会話を習わせたのである。週4コマのレッスンがもう10年も続いている。だから、若い板前たちは、海外からのゲストの対応をしっかりと任せられるまでになっている。10年以上も前にそうしたアイデアを思いつくというのはさすがとしかいいようがない。

さらに当時、ペニンシュラやマンダリン・オリエンタルなど高級ホテルのコンシェルジュに15枚分の招待状を出した。必ず20時すぎに3~4人で来ることを条件にして。そして、実際に、インバウンド客とのやりとりを見てもらう。すると、ホテルゲストから寿司が食べたいというリクエストがあったときに、コンシェルジュたちは自信を持って銀座寿司幸本店を推薦してくれるようになった。

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