高級ホテルの顧客が通う「銀座の高級寿司」の実際 「銀座寿司幸」が140年繁盛している納得の理由

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ビールなら、キリン、サッポロ、エビス、サントリー、アサヒとそろえるのはあたりまえ。当時はたとえば、「三菱系の会社の人はキリン」など、どこに勤めているかで飲むビールが決まっていたからだ。

日本酒も各地の地酒を揃えた。客が新潟の出身とわかれば新潟の酒を出し、広島とわかればそれというように。これは接待にも使えた。接待相手の出身地を事前に調べておき、用意しておいてもらうなどということもできるからだ。バブル期に重なるように吟醸酒ブームが到来し、客はこぞって高級日本酒を開けた。

その次に予想を超える焼酎ブームが沸き起こる。それこそ「森伊蔵」など、抽選でなければ購入できない、幻の超人気焼酎がいくつも登場したが、元来、酒に関する知識が豊富で、酒屋との付き合いも密であった先代の杉山氏 は、容易にそうした焼酎を手に入れることもできたという。銀座寿司幸本店に行けば、特別の焼酎が飲めると、客は喜んで訪れた。

焼酎ブームの前にバブルが崩壊したが、バブル後も客足が絶えることはなかったという。「しょせん、一升マス(料理屋のこと)には一升しか入らない、9割になってももちこたえられた」と杉山氏。料理屋の利益をマスに喩える。

「ワイン×寿司」もいち早く始めた

そして、今でこそ珍しくもなくなったが、寿司にワインを合わせるという試みをいち早く始めたのが杉山氏なのである。自身がワイン好きで、自ら勉強し、知識を深め、魚とのマリアージュを趣味として研究――穴子にはムルソー、トロにはピノ・ノワールを合わせるといった具合に――していたのだが、そこにワイン好きの顧客たちがとびついたというわけだ。

「アルコール類に力を入れていてよかったのは2008年のリーマンショックと2011年の東日本大地震のときですね。両方とも客が1/3になったけれど、ワインを目当てにやってくる客は根強かった」と杉山氏。

「実は東日本大震災の前は景気がよかったものだから、ワインをしこたま買い込んでいて、不良在庫が山のように地下のセラーに眠っていたんです。原価を払い終わっていると考えると、2万円のワインを1本開けてもらえば、2万円の利益が出るんですよ」

銀座寿司幸の4代目、杉山衛氏(撮影:梅谷秀司)
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