"新宿野戦病院"が「コロナ後生きる私達」に響く訳 脚本家の宮藤官九郎が伝えたいメッセージ

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ウイルスがようやく収まり、人々が街にあふれて社会が通常化するのを喜ぶなか、歌舞伎町の雑居ビルのクラブで床崩落事故が発生し、多数のケガ人が聖まごころ病院に運ばれてくる。

第8話のコンセプトカフェ爆破事件のときと同じく、聖まごころ病院は大災害時の野戦病院と化した。そこで医師たちは、ウイルス感染防止対策も必要になるなか、トリアージを含めた緊急医療対応を完璧にこなす。

そこには、コロナ禍を経て次なる感染症が世の中を襲った場合を想定して備えをしていた医療従事者たちの冷静かつ適切な行動があった。コロナ禍のあとは、それ以前と変わらないことばかりではない。われわれの命や安全を支えてくれていた医療現場は、過去のすべてを糧にして前へ進んでいる。

それをわれわれはどう見て、何を感じるのかが問われている。

地域社会への前向きなメッセージ

新たなウイルスが再び世界中に蔓延したとき、本作で描かれたような差別や偏見による攻撃や風評被害もまた起こるかもしれない。

それをドラマで描いて、世間に客観的に見せたことの意義は大きいだろう。心ある多くの人にとって、そこからの気づきや得ることがあるに違いない。

劇中でヨウコは、ウイルスが収まりつつあり、平時に向かう社会において「いま怖いのはウイルスより人の心」と、同調圧力と疑心暗鬼で世知辛くなった世の中に対して言い放つ。

一方、感染者であふれ窮する病院へ、病床を提供するとサポートを名乗り出る地域の事業者も現れた。

人が人を攻撃する世の中であっても、地域社会でお互いに助け合おうとする、心ある人は存在する。そういう人たちによって、救われる人がいて、社会が少しでも明るくなる。そうした前向きなメッセージでドラマは締めくくられた。

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