「新宿野戦病院」が"もっと評価されてもいい"根拠 「虎に翼」とのキャスト被りが話題になっているが…
仲野を筆頭に、同じ人とは思えない人物を軽やかに演じる芸達者な俳優たちの名演技によって『新宿野戦病院』は毎回楽しく見ることができた。
多国籍で、富裕層から貧困層まで幅広い人たちが集う新宿歌舞伎町。誰もを受け入れる懐の大きな街にある聖まごころ病院は、どんな患者でも受け入れる、まさに人間交差点の交差点。そこに出入りする人たちと医者たちの人間模様は、笑いあり涙あり。
とくに後半、LGBTQの息子(塚地)と認知症になった母(藤田弓子)の親子愛や、リアリティある「ルミナ」という未知のウイルスによる感染症の蔓延など、ヒューマンなエピソードが増えた。もともと令和の『赤ひげ』のような気配はあったが、その傾向が終わりに従って色濃くなってきた。
宮藤官九郎の描く、おもしろくないと負けのゲームのように、会話におもしろさを絶対に付与したうえに早口でしゃべる会話場面と、みんな大好き“ヒューマン医療ドラマ”がかけあわさった社会派医療コメディとして、このままきれいにまとまりそうだ。これだけいいキャラクターが集まっているのだからシリーズ化してほしいくらいである。
ラフに見えて繊細な「小池栄子」の魅力
朝ドラ被りが話題の中、被っていないのが小池栄子である。
朝ドラ経験が豊富な小池(2003年『こころ』、2008年『瞳』、2015年『マッサン』)だが、今回は『新宿野戦病院』に集中している。
仲野太賀とW主演の小池が演じるアメリカ国籍の軍医ヨウコ・ニシ・フリーマンは、仲野演じる美容皮膚科医とは親戚関係(いとこ)。2人は第10話でキスしていたが(しかも感染症対策で濃厚接触は厳禁)、恋に発展することはおそらくなさそうである。
拝金主義の美容皮膚科医とは真逆の、お金の有無を命の選別の基準にしないヨウコは、つねに的確にトリアージしている。「戦場では命は平等である」と考え、戦場から歌舞伎町と活躍の場を移しても、分け隔てなく治療にあたる医師の良心のような存在で、美容皮膚科医は彼女の影響でお金より人の心を重要視していくようになる。
だがそれだけでは、小池栄子演じるヨウコはよくあるヒューマンな医療ものの主人公にすぎない。そこが宮藤官九郎流で、ヨウコはアメリカ国籍ながら英語がそんなに流暢ではないし、日本語はコッテコテの岡山弁。なんだか不自由に聞こえる言葉遣いと、戦場をかいくぐってきているだけあるやたらと豪快な身振りが、ヨウコのキャラを印象的なものにしていた。
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