「新宿野戦病院」が"もっと評価されてもいい"根拠 「虎に翼」とのキャスト被りが話題になっているが…
例えば、仲野太賀は、実直すぎる夫(『虎に翼』)から、お金がすべての美容皮膚科医(『新宿野戦病院』)、塚地は人権派弁護士(『虎に翼』)からLGBTQの看護師(『新宿野戦病院』)、余貴美子は上品な最高裁長官の妻(『虎に翼』)からヤンキーっぽいジャズシンガー(『新宿野戦病院』)、戸塚純貴は誠実な弁護士(『虎に翼』)から歌舞伎町のホスト(『新宿野戦病院』)。
『新宿野戦病院』と『虎に翼』、どちらも見ている視聴者たちは、昭和から令和に転生したとSNSでは視聴者がネタにして楽しんでいるし、あえての真逆なキャラで、俳優にとっては変幻自在の才能のプレゼンにもなっている。
『虎に翼』で真面目な人物を演じているからこそ、『新宿野戦病院』ではそうでない人物を演じて相対化を図りたい、そんな意図があるような、ないような。
ただ、平岩紙と岡部たかしだけは少し被っていて、平岩はどちらもなりたい職業になかなかつけないでいるやや幸薄そうに見える人物で、岡部は家族思いの父親である(『新宿野戦病院』のほうがかなりだらしない人物ではある)。
いろいろな顔を自在に演じることが俳優のプライオリティになる。とりわけ仲野太賀の飛距離は圧巻である。
『虎に翼』では、こんなにいい人はいないと言われるほどの善人・優三さん(主人公の最初の夫)を演じ、亡くなったときには優三さんロスが巻き起こった。
ところが、『新宿野戦病院』ではちゃらくて食えない美容皮膚科医なのである。話が進むにつれてじょじょにいい人になっていくものの、SMの女王様に攻められている姿に優三さんファンは苦笑いという感じだったと思う。
「ゆとりモンスター」から「秀吉の弟」まで
かつてスター俳優は、高倉健や渥美清など、一定のイメージを守り続けていたものだが、仲野太賀は、固定した役のイメージを抱かないでくださいとばかりに毎度、視聴者のイメージをひらりひらりと覆していく。
数年前の出演作『ゆとりですがなにか』(2016年、日本テレビ系)ではコンプライアンスを逆手に会社の上司たちに強気で振る舞う「ゆとりモンスター」と呼ばれる恐るべき若手社員を演じていたが、その後に、いい人すぎるほどの優三さん。そして次はちゃらい美容皮膚科医と、イメージのアップダウンを繰り返している。
いや、演技の幅的には評価はアップし続けていると言ってよい。この勢いのまま、主演作、2026年度のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』に突入し、堂々、豊臣秀長役を演じてほしい。くせ者・秀吉の片腕だった弟はたぶん“いい人”のはずである。
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