「新宿野戦病院」が"もっと評価されてもいい"根拠 「虎に翼」とのキャスト被りが話題になっているが…
小池栄子は大きな瞳をひん剥き、まばたきもせず、口を大きく開けて大声でしゃべる。両足は大股で、とにかく身振り手振りが大きい。ともすると、うるさく下品に見えたり、無理しすぎで痛々しく見えたり、きつく怖く見えたりと、おそらく演じるのは難しい役だと思う。
ところが小池は、元からエネルギッシュなイメージがあるのでまったく無理をしているように見えない。
小池はヨウコのうるささをうまいことコントロールしているようにも見える。
タンクトップの上にシャツを無造作に羽織り、ジーパンや短パン、キャップにゴツいブーツとカジュアルなファッションだが、けっしてボーイッシュすぎず、ほんの少しだけ女性らしい身体のラインが見えそうで見えない微妙なところをキープして、清潔感もある。
ラフに見えて繊細。ヨウコは命をラフ(雑)に救う医者という設定だが、雑でも命の危機を見事に救っているのと同じく、小池栄子は見せ方(演技)にものすごく緻密な計算を働かせているように感じるのだ。
軽やかにまったく違うキャラクターを演じ分ける俳優も魅力的だが、ひとつの役をこんなにも集中して突き詰めて見えることもいいものである。小池栄子が朝ドラと被っていなくてほんとうによかった。
大ベテランだが、「朝ドラ」と縁がない名優
ほかにも濱田岳、橋本愛や生瀬勝久、柄本明、高畑淳子など、現・朝ドラと被っていない名優たちがいる。だが彼らは今回の『虎に翼』には出ていないが、濱田も橋本も生瀬も高畑も、朝ドラブームがはじまった2010年代以降の作品で非常に印象的な役をやって人気を博してきた。
朝ドラに出て全国区に認知度があがった俳優を起用したいのは当然であろうとつくづく思う。
だがしかし、その中で2010年代以降の朝ドラと縁のない俳優がいた。主要な俳優の中では柄本明だけ2010年代以降の朝ドラと縁がなかったのである。朝ドラに出てなくても認知度抜群であることは昨今、むしろ、貴重である。柄本は飄々と、清濁併せのみ、歌舞伎町の赤ひげ先生的な役割を担っている。
そんなことも含めて『新宿野戦病院』はおもしろい。
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