「兵庫県知事」の言動に世間が覚えた違和感の正体 職員への異様な要求は"霞が関文化"の副産物か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

斎藤知事は、宮城県庁への出向時に知り合った兵庫県職員を側近として重用した。だが、「信頼できるスタッフ」と呼ぶ副知事などがいる場で付箋を投げる威圧的行為を行ったことも判明している。

告発文書を送った元幹部については、「嘘八百」「公務員失格」と記者会見で断じた。その元幹部は自殺とみられるかたちで死亡し、「公開パワハラ」(上智大の奥山俊宏教授)といった批判が高まっている。「政策は本来チームでやらないとうまく進まない。公の場で嘘つき呼ばわりした時点で、仲間を仲間と思わない考え方が明らかだ。知事としての適性を欠く」(先の総務省幹部)。

職員向けアンケートでは、「瞬間湯沸かし器」と呼ばれていたことも明かされた斎藤知事。百条委で自身の性格を問われると、「仕事とかにミスがあったりするときに短気な面がある」と認め、「県民にとってよい仕事をしたいとの思いでやっていた」と語った。だが、前出とは別の総務省幹部は「真面目な人こそ、いろんなストレスがかかる中でパワハラ的言動をやってしまいがちだが、それは知事としてのマネジメント能力の欠落を意味する」と突き放す。

繰り返す「官僚的」答弁

世論の批判が高まる一方、斎藤知事は自身の辞職を再三否定してきた。2021年の知事選で県民からの負託を受けて当選したことを理由に、「さまざまな批判はあるが、真摯に受け止め、県政を前に進めていくのが責任だ」といった趣旨の発言を繰り返している。

斎藤知事の発言で目立つ紋切り型のレトリックに、知事選で斎藤知事を支持した日本維新の会の吉村洋文共同代表は7月の記者会見で、「官僚的な言い方ではなく、もっと自分の言葉で1個1個正面から伝えていくべきだ」と苦言を呈した。

百条委では、委員を務める県議が「知事の答弁にいくつかパターンがある気がしている。例えば、「『認識はない』は『自覚はあるけど見解の相違』。『(職員を)きつく注意した』は『記憶はあるが正当だ』。『業務上の指導』は『当然の対応』。私は、こういうふうに捉えている」と皮肉る場面もあった。

「『この件はこういう方針でいく』と一度決めると、それ以外言えなくなる。過去との整合性を大事にし、いったん決めた方針からスタンスを変えないのは、まさに官僚的だ。それは『絶対に知事を辞めたくない』というところから来ている」(総務省関係者)

日に日に辞任を求める包囲網が狭まる斎藤知事。議会、職員との間の「ズレ」が埋まらないまま、兵庫県政の混乱は深まっている。

茶山 瞭 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、通信業界とITベンダー業界を中心に取材。メディア、都市といったテーマにも関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んだ。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事