レッドソックス上原が絶対に譲れないこと 骨折しても"雑草魂"は健在だった

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

故障者リスト入りする前の7月7日(日本時間8日)のマーリンズ戦で、上原は3年連続20セーブを記録した。40歳以上の20セーブはメジャー史上6人目。日本球界でも、40歳以上のシーズンで20セーブに到達したのは2014年の岩瀬(中日)だけという快挙だ。

「こちらではすぐにカットされるのはキャンプから当たり前ですから。明日さえどうなるかわからない」

 球団関係者は「ナイターでも午前中に早々と球場入りして、入念なトレーニングで体を温めてグラウンドに出る。40歳になって結果に導くのは、想像を尽くせないほど準備に固執しているからでしょう」と説明した。

日本球界と試合数も環境も異なる本場のアメリカでは、確固たる成績を残し、それがチームの勝利に結びつかない限り身分は保障されない。

そういえば、8月18日の中日戦(ナゴヤドーム)の1回、平田のライナーが、やはり広島・黒田博樹が差し出した右手の平を直撃した。「それで投げられなくなっても仕方がない」。黒田にもぶれない覚悟がにじみ出ていて、40歳男たちの姿がたぶった。

過去の栄光を捨てよ

別れ際、上原に異国で成功するためにもっとも大切なことは〝何か〟を尋ねると、しばらく考え込んだ末に口を開いた。

「過去を捨てることですかね。過去の栄光を捨てること。そんなのこちらでは通用しませんから」

 巨人のエースにのし上がって、日本球界を代表するピッチャーとして、マスコミを含めた周囲からチヤホヤされた。

特に国内の人気チームともなれば、実力が伴わない選手にもタニマチが群がって、夜のネオン街に連れていかれてのはしご酒は少なくない。

「日本ではありましたが、こちらにきて1度も夜出歩いたことはないですね。たまの食事ぐらいで、あとは外出していません」

力以外に通用する武器がない世界。上原は登板後も球場内でトレーニングをこなし、電気治療などを済ませ、ホテルと球場の往復だけのストイックな生活を送り続ける。

過去の栄光と決別することで生き残ってきた。不惑の年に襲った試練。サンドバッグにも意地がある。そのカベを乗り越え、立ち上がっていくのも〝雑草〟らしい。

寺尾 博和 日刊スポーツ新聞社大阪本社編集委員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

てらお ひろかず / Hirokazu Terao

てらお・ひろかず 日刊スポーツ新聞社大阪本社編集委員。阪神、近鉄、南海、ダイエーなどを担当、野茂英雄のメジャー行きから現地に派遣される。2004年球界再編を取材、2008年北京五輪、09年WBCなど国際大会などで日本代表チームのキャップを務める。現在は主に東京五輪での野球ソフトボール復活を取材中。ミニストップ社とコラボでオリジナルスイーツ作り、オリジン社と弁当開発を手掛けて全国発売するなど、異色の名物スクープ国際派記者。大体大野球部出身。福井県あわら温泉生まれ。趣味はスポーツ、歌舞伎、舞台鑑賞。毎週木曜日にABC朝日放送「おはようコール」のコメンテーターとしてレギュラー出演。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事