フィンランドの彼女が「ちょっといい卵」買う理由 欧州に広がる「ソーシャルジャスティス」とは?

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

はたしてこれらのメッセージは、人々の購買の後押しになるのだろうか。わからないけれど、まったく関心に上らない事柄だったらこんなにパッケージの目立つところに書かないだろう。恥ずかしながら、私はそこにグッと惹かれる人間ではない。だからそんな表示を見ると、自分が品格の低い人間だという事実を突きつけられているようで直視できず、目を逸らしてしまうのだった。

「ソーシャルジャスティス」って何?

北欧のアイスランドでお世話になったソフィアさんも、そんな「ちょっといいものを手に取る人」の1人だった。大学の教育学部で研究しているからか、わからないことは根気よく教えてくれる姿勢の持ち主で、社会的な視点ももっているので思い切って聞いてみた。

「どうしてちょっと高いものを、自分には別に得がないのに選ぶことができるの?私にとっては安いとか、おいしいとか自分にとっての利益が大事で、人のために追加でお金を払おうと思えないんだけど」

すると彼女は私の目を見て言った。「ソーシャルジャスティス(social justice)って聞いたことある?アイスランドはじめ北欧諸国で基盤となる考え方だよ。私の専門の教育分野でもこの概念は大事で、社会のあらゆる場面で礎となっているんだ」。

彼女の働く大学内のカフェテリア。6種類のゴミ箱があり、「責任ある分類を」と書かれていた

ソーシャルジャスティス?直訳すると、社会正義。聞いたことがあるような、ないような。なんとなく意味は想像できるけれどよくわからない。

しかし、調べてみると、たしかにこのソーシャルジャスティスという考え方は生活や社会の隅々に通じていて、買物はじめ食のシーンで感じていた日本とヨーロッパの違いの原因が、少し理解できるような気がした。

ソーシャルジャスティスという言葉の発祥は、18世紀末に遡る。イギリスから産業革命が始まる中で、資本家による労働者の搾取に対して抗議の表現として登場したもののようだ。19世紀に入り、産業革命とともに労働問題がヨーロッパ全土に広がっていくと、進歩的な思想家や政治活動家の革命的なスローガンとして広まっていった。

そんなうねりのなかで、1919年国際労働機関(ILO)が設立される。ILOは、労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国際連合の専門機関で、国連組織の中で最古の機関である。そのILO憲章の冒頭に掲げられているのが、以下の一文だ。

「世界の永続する平和は、ソーシャルジャスティスを基礎としてのみ確立することができる」

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事