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人はなぜ身分と学歴をまとう者にだまされるのか フランス超エリート校の廃止が持つエリートの意味

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素材がエリートの資格であるというのだ。それは大学でなくとも、高校や中学でもいい。ブランド小学校に入ったことも、ある意味、高学歴を意味することになる。

だから学歴エリートは素材とやらは別として、専門的業績も教養もなくともエリートたりえるのである。こうして難関試験に受かっただけで世間にちやほやされる学歴エリートは、『山月記』の李徴のように、傲慢不遜な人間となることが可能となるのだ。

そうした輩が若いうちからちやほやされれば、専門的業績や教養、そして実績のある、学歴のない者を小ばかにしてしまうのも、無理のないことかもしれない。そしてそのまま十分な知識もなく、上座に座り、政治や経済を指導し、支配することになりかねないのだ。

エリートによる横暴を甘受する国民

しかるに、今日本では、世襲議員という名の特権身分エリートと、こうした学歴(最近では日本以上に権威のあるアメリカのブランド大学を出た)エリートが日本の針路をつかさどっている。植民地政権よろしく、それにかしずかねばならないわが国民は、まことに哀れだというしかない。

しかしながら、国民は、何度もこうしたエリートの横暴で被害を受けながらも、輝かしい身分とその学歴に魅了されて、何度でもだまされ続けることになるのである。

これはもちろん今に始まったことではない。確かな能力だと判断するものがない以上、そうではないと理解しつつも、人はまたその身分と学歴の魔力に翻弄され、容易にだまされてしまうのである。

このことを見事に表現した、1853年のカール・マルクスの言葉を最後に引用しておこう。

「ルッジェーロは、何度でもアルチーナの偽りの色香に惑わされる。その色香のかげには、そのじつ、「歯もなく、目もなく、味覚もなく、なにもない」一人の老いた魔女が隠れているものだということは、彼にもよくわかっているのだが。この武者修行の騎士は、これがいままで自分に恋慕した人間をみなロバや、そのほかの動物に変えてしまった女だということを知りながら、またしても彼女に恋慕するのを抑えることができない。イギリスの大衆こそもう一人のルッジェーロであり、パーマーストンはもう一人のアルチーナなのである」(『ザ・ピープルズ・ぺーパー』1853年10月22日、『マルクス=エンゲルス全集』大月書店、341ページ)。

 

だまされないためには、大衆にも、学歴という魔力から抜け出すための経験知と地頭が必要なのだ。

(ちなみにルッジェーロとアルチーナの物語はアリオストの『狂えるオルランド』〈脇功訳、名古屋大学出版会、2022年〉の登場人物である)

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