地方私鉄と「台北メトロ」友好協定の本当の狙い 「知られざる観光地」求める訪日客取り込めるか
「共通の接点であった丸紅さんを通して、台北メトロさんが日本の鉄道事業者で友好協定を結べるところがないか探しているという話が入ってきた」と語るのは、アルピコ交通の隠居哲矢鉄道事業部長だ。2024年6月、アルピコ交通は、長野電鉄と共に台北メトロと3社間での友好協定を結んだ。
台北メトロは鉄道システムの導入関連で、またアルピコ交通は顔認証システムの実証実験や空飛ぶ車の開発で丸紅と接点があった。丸紅ならば、各地の鉄道会社との取引があるだろう。しかし、その中で、「丸紅さんが、信州の会社がいいのではないか」ということで、台北メトロに対してアルピコ交通を紹介したのがきっかけとなった。そして、同じく長野県を地盤とする長野電鉄にも声をかけ、加わることになった。
ちなみに、台北メトロがすでに結んでいた先述の静岡県内の鉄道会社との友好協定は、別の仲立ちを通して実現しているとのことだ。また、これとは別に、2月には別府ロープウェイ(大分県)とも友好協定を結んでいる。台北メトロが日本の大都市ではなく、地方に注目しているということは紛れもない事実である。
知られざる観光地への送客目指す
この背景には、台湾側からしても台湾の人々にまだ知られていない、日本の地方の観光地を知ってもらいたいという思惑がある。東京や大阪の有名な観光地は何度も訪れ、もう知り尽くしてしまっている人も多い。表向きには相互送客というのが友好協定の理由付けであるが、実は台北メトロ側としても、日本により多くの観光客を送り出したいという思いがある。
台湾から日本へのインバウンド旅行者に対し、日本から台湾へのアウトバウンドが圧倒的に少ないという根本的問題は、過去にも取り上げられているが、昨今の日本人の海外旅行離れからして、これを均衡化するのはかなり難しい。
隠居部長によれば、「将来的には台北メトロとして、台湾から日本に送客する事業をやりたいという希望があるようだと聞いている」とのことで、台北メトロによる日本のプロモーションは今後、一層強化されるかもしれない。だからこそ、今の段階から地方の鉄道事業者と連携し、観光資源を発掘することに力を入れているわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら