地方私鉄と「台北メトロ」友好協定の本当の狙い 「知られざる観光地」求める訪日客取り込めるか

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友好協定を継続的に、そしてより親密な連携関係を築くには、日本側からも積極的に観光資源を発掘し、商品化する必要がある。

その点で、アルピコ交通を擁するアルピコグループには下地がある。同グループは、「『長野を国際リゾート化し』地域とアルピコを活性化させる」という「ALPICO AAA戦略」を策定し、インバウンド誘客を推進している。ちなみに3つのAは「ALLIANCE:富裕層獲得、外資誘致、海外進出、海外企業とのコラボ等」「ACADEMY:国内海外教育機関での講義、海外人材の採用、グローバル人材の育成等」「AIRLINE:プライベートジェットによるアルプス遊覧飛行、ホンダジェットの松本空港利用等」である。

「今回の友好協定は、あくまでも交通部門の連携であり、アルピコグループ全体のインバウンド戦略の中にあるものではない」と前置きをした上で語るのは、アルピコホールディングス(HD)グローバル事業推進室の松木嘉広室長だ。

同社はインバウンド戦略を強化しており、2013年にバンコク事務所を開設、2015年には本社にインバウンド推進室を設置した。2017年にグループ6施設に宿泊する外国人観光客は延べ2万5000人ほどだったものが、2019年には5万人にまで増加した。この数は全体の25%ほどを占めているという。

大手旅行会社のマレーシア支店勤務を経て、長年シンガポールの現地旅行会社で訪日ツアーの企画や添乗に携わってきたという経歴を持つ松木室長は、インバウンド事情に精通し、観光商品の開発、営業のプロフェッショナルだ。コロナ前には毎年5回前後海外出張し、主にアジアの国々に対して営業を行ってきた。

国内客のオフピークを補うアジアの需要

国内需要では大型連休などの特定の時期に混雑が集中するが、インバウンド需要を取り込むことで平日の集客を見込めるほか、ゴールデンウィークと夏休みの谷間かつ、梅雨という閑散シーズンの穴埋めとして、6月の東南アジアにおけるスクールホリデーの存在は心強い。

アルピコ 20100 デジタルサイネージ
英語・中国語・韓国語で案内表示している上高地線車内のデジタルサイネージ(編集部撮影)

また、「冬の集客は松本地域の最大の課題」とのことだが、東南アジアからの観光客には雪遊び需要がある。アルピコグループにとっての一大観光地である上高地は冬季閉鎖となるため、相性は抜群だ。

「雪を求めて来日される東南アジア、東アジアのお客様が滞在する高山市や白馬バレーとの広域連携は非常に重要。地域のお母さんたちと組んだ郷土料理のランチ、スノーシューウォーク、白馬岩岳ロープウェイなど、本格的なスキーはしないが、雪を見て、雪で遊ぶという地域アクティビティを紹介しており、コロナ前は1~3月の期間で400名の利用があった」と松木室長はいう。

また、マレーシア、シンガポール在勤時代のコネクションも生かし、富裕層個人に向けた直接営業、オーダーメイド型の旅行提案も推進する。松木室長は「地方と地方を直接結ぶためのホンダジェットとの提携や、高級車両タクシーの導入、ドライバーの英語教育といった取り組みを始めており、地域と一緒に新たな観光資源の開発・発掘・磨き上げを行うことで、富裕層のお客様も満足し、長期滞在できる地域を目指している」と語る。

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