「永遠の輝き」が世界で安くなっている理由

閉鎖的なダイヤ取引、日本は反対に値上がり

ダイヤモンドは供給側の理論によって、長らく価格が維持されてきた(jazzman/PIXTA)

「明らかに潮目は変わった。中国のバブルが崩壊するようなことがあれば、価格はもっと大きく下がるだろう」。宝石輸入商社・諏訪貿易のバイヤーである原田信之取締役はこう漏らす。価格が下がっているのは、「永遠の輝き」と称される、ダイヤモンドだ。

ダイヤの取引は、鉱山会社が研磨業者に原石を卸し、その後磨かれたものが卸業者や宝飾品メーカーに売られる。これがさらに指輪やネックレスに加工されて、私たちの手に渡ってくる。

これまであまり下がることのなかったダイヤモンド。だが、海外の研磨業者からの卸価格(1カラットの標準品)は、1年前には8000ドル近かったものが、現在は7000ドル程度まで下がった。価格維持の影の役者だった鉱山会社デ・ビアス(南アフリカ共和国)も今春、ついに研磨業者へ渡す原石の値下げに踏み切ったという。背景にあるのは、米国に次ぐ世界第2位のダイヤ需要国に成長した中国をはじめとする、新興国での需要急減だ。

中国では日本と同様、婚礼用にダイヤの指輪を購入する習慣が定着してきた。さらにここ数年は、富裕層向けにダイヤの付いた腕時計がかなり売れていた。だが習近平政権のもと、倹約令が強化されたほか、景気の減速もあって昨年後半から需要が後退。店頭での小売価格が下がり始めた。一方で、鉱山会社が産出する原石の価格は据え置かれたため、インドなどに多い研磨業者は、急速に経営が悪化した。

海外へ定期的に研磨ダイヤの買い付けに行く宝飾品製造卸の大手・ナガホリの中尾直・商品部部長は、「2010~13年ごろは中国での需要が急増し、研磨業者からの卸価格も急騰したが、昨年ぐらいから需要が落ち、卸価格も大粒の高額品を除けば値下がりしている。インドの研磨業者は在庫がさばけず、最近何社か倒産した」と語る。

市場を支配するデ・ビアス

ダイヤモンドの原石価格は、これまで緩やかな上昇基調が続いてきた。ダイヤ原石の採掘は、紀元前からインドなどで行われていたが、産出量が増えたのは南アフリカで機械による採掘が始まった19世紀末から。1888年にはデ・ビアスが設立され、長い間、業界に君臨してきた。

同社は7~8割の産出量シェアを持っていたが、他の鉱山会社からも原石を買い取り、販売をほぼ独占。原石の産出量や販売量を調整すると同時に、世界での販促活動も手掛け、価格が下がらないようにコントロールしてきた。「ダイヤモンドは永遠の輝き」は、需要を喚起するために、同社が世界中で宣伝してきたキャッチコピーだ。

次ページ採算合わなくても買わざるをえず
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 高城幸司の会社の歩き方
  • 山本シンヤが迫るクルマ開発者の本音
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ソニーとパナソニック、10年で大差ついた稼ぎ方
ソニーとパナソニック、10年で大差ついた稼ぎ方
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
15種類の「書き方」を徹底解説<br>無敵の文章術

ビジネスパーソンを中心に文章力の必要性が高まっています。在宅勤務における情報伝達手段として、メールやチャットは不可欠に。また精度の高い企画書はビジネスの成功に直結します。本特集ではシーンや目的別に、短期間でのスキル向上を目指します。

東洋経済education×ICT