「永遠の輝き」が世界で安くなっている理由 閉鎖的なダイヤ取引、日本は反対に値上がり
デ・ビアスから原石を直接調達できる業者は「サイトホルダー」と呼ばれ、インドやベルギーの研磨業者など世界に約85社しかない。通常、両者の間で価格交渉は行われず、デ・ビアスが提示した価格と量を、サイトホルダーが引き取る。引き取りを拒否すると直接取引できる権利を失うので、採算が合わなくても買うしかない仕組みだ。
こうしたデ・ビアスの支配構造に変化が見え始めたのは、1990年代。きっかけは競合の出現だ。豪州の新しい大規模鉱山で採掘を行っていた英豪系の資源会社大手・リオ・ティントと、ロシアの国営鉱山会社・アルロサが、デ・ビアスを通さず独自にダイヤ原石の販売を始めたのだ。
豪州やロシアの鉱山から産出される原石をコントロールできなくなり、21世紀に入るとデ・ビアスも方針を転換。「今後は価格を需給に任せる」と宣言した。
「価格が下がらないようにしてきた」
とはいえ、希少性や魅力が定着したダイヤの原石価格は、その後もほとんど下がらなかった。現在は、デ・ビアスとアルロサの寡占状態で、産出シェアは両社で7~8割に上る。勢力は拮抗しているが、デ・ビアスの影響力はなお大きい。
かつて同社で日本の販促責任者を務めた石原嶋男氏は、「量的な産出シェアを維持する戦略は放棄しても、サイトホルダーに販促強化を義務づけるなどして、価格が下がらないように努めてきた」と話す。アルロサも原石価格は下げたくないので、安値で大量販売してシェアを伸ばす戦略は採らなかった。
だがこの春には、前述したようにデ・ビアスが一部の原石で値下げを断行したとのニュースが流れた。サイトホルダーに対し、割り当てた原石を全量引き取らないことも容認し始めたという。需要減退による研磨業者の苦境を無視できず、デ・ビアスもとうとう重い腰を上げたのだ。同社による価格支配構造が崩れた象徴的な出来事だろう。
ところが、日本国内での小売価格はむしろ上昇している。国内の商社や宝飾品メーカーは、海外からの仕入れをドルで支払うが、円安で仕入れコストが上がっているのだ。金やプラチナなどの貴金属でも、同じ現象が起きている。
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