セリア「大量閉店」報道めぐる反応に覚えた違和感 「円安がすべての元凶」言説は理解が浅すぎる

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・セリアの最新状況

そこでセリアの有価証券報告書(2023年4月1日から2024年3月31日)を見てみよう。ここで面白い記述があるので引用する。

“100円ショップ業界は、当社を含む4社の寡占状態にあり、その店舗数は日本全体で8,000店を超えております。市場規模につきましては、各社とも継続的に出店しており、引き続き拡大していくと見られますが、近年、収益性が低下している傾向が見られることから、100円ショップ市場が飽和状態に入っている可能性が考えられます。その環境下で同業他社は、100円を超える価格の商品の取扱いを開始、拡充する動きを見せており、当社は100円商品に特化することで、100円商品のシェア獲得の好機と考えております。”(7ページ)

本文中にある、「収益性」とは利益のことではなく売上等を指すから、規模が上限にきていると危機感を持っているのは明確だ。だから各社とも他価格帯に手を伸ばしている。そのうえで、自社は拡大せずに100円のラインナップを充実させたほうが、100円にかぎって他社からシェアを奪取できるとしている。

なるほど、これは単純に差別化戦略といってもいいし、「Focused Cost Leadership Strategy(特定価格リーダーシップ戦略)」に特化したものと評価できるだろう。

次に、業績と出店・閉店の実態を見てみよう。

【業績】
2023年3月期
売上高:2123億円、営業利益:154億円
2024年3月期
売上高:2232億円(前年比+5.1%)、営業利益:151億円(前年比▲2.1%)
【出店・退店】
2023年3月期
出店:132、退店:47
2024年3月期
出店:133、退店:71

以上の状況だ。

セリアの経営は失敗しているか?

ところで、セリアの経営を問題視している人たちは、利益が減少していることを問題視しているらしい。さらに、退店が昨年を上回るペースで進んでいることも指摘している。

しかし、それらの指摘については「はあ……」という感想しかない。営業利益率は6.7%出ている。なお、同業者でいえばキャンドゥの2024年2月期は営業利益率が0.3%だった。さらにワッツの2023年8月期は1%だった。ここから見ても、一部が騒ぐほどセリアに問題があるようには見えない。

セリアの利益率グラフ
キャンドゥやワッツと比較しても、セリアの利益率の高さは際立っている(編集部作成)
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