セリア「大量閉店」報道めぐる反応に覚えた違和感 「円安がすべての元凶」言説は理解が浅すぎる

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次に、じゅうぶんに健闘しているように見えるセリアだが、この減益が巷間でいわれる円安が原因かどうかだ。

セリアは売上原価率で見れば、10年分の推移を公開している。10年前の2015年3月期では約58%、これが2024年3月期では58.7%に上昇している。もちろんこれを見て「上がったじゃないか」と言われればそうだが、この差異をもって理由とみなすのは強引ではないだろうか。

もちろん私は円安がなんの影響も与えていないとは言っていない。影響はある。ただ、利益の悪化原因は地代家賃の上昇と給与手当の増加。この2つの合計が大半の理由を占めている。

よって客観的に見ても「100円ショップで、100円だけの商品を販売することが商売として成立していない」とか「円安がすべての元凶」とかいった言説は言いすぎか、あるいは、印象論にはまっていて決算書や他社状況を調べていないだけのように感じられる。

ところで、私はいつも思うのだが、他社の商売や業績を批判的に論じるひとは、どのような優良企業に勤めているのだろうか。知りたいところである(いや、ほんとうは時間がもったいないので、さほど知りたいとも思わない)。

退店と出店については?

なお退店が多い点はどうだろうか。

セリアの出店数と退店数
セリアはもともと、数年に1度は多めに退店してきたし、出店数はそれを上回っている(編集部作成)

セリアは、以前からスクラップ&ビルドをずっと繰り返している。退店がたしかに前年よりも多いとはいえ、退店のほとんどが貸主都合か契約満了、または店舗自体の移転によるものだ。ここを見ても、「100円ショップで、100円だけの商品を販売することが商売として成立していない」といったイメージとは遠い。

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また不採算が7店はある。ただ、これは不採算立地からの撤退を早めに決めているだけだろう。とくに2020年からの巣ごもり需要で100円ショップ関連が盛り上がった。その反動があるのでしかたがない。

もちろん、私は同社にリスクがないとはいっていない。現在は小売業において合併や協業が相次いでいる。出店はすべて賃貸の形を取っており、今後、出店物件の減少や取得が困難になる可能性がある。同社は他企業が撤退した跡地に出店しているが、その戦略がこのまま続くかはわからない。

実質賃金がプラスに転じたとはいえ、まだ生活が楽になっている実感は得がたい。まだまだ日本では節約志向が続く。そのタイミングにおいて、まだまだ100円ショップは存在意義があり、さらに少しでも買い物を楽しくしたいニーズがあるだろう。その意味でも、セリアの今後に引き続き注目したい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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