「新iPhone」から広告は締め出されるのか iOS9でアップルがやろうとしていること

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ただし、こうしたコンテンツブロックを行うコードを、アップルがなんの審査/制限もかけずに流通させるかというと、そこには疑問がある。機能が存在することと、それをどう運用するかは別の切り口である。運用開始後にも、問題があれば機能の中身を変えてくるかもしれない。

また、Content BlockerはウェブブラウザであるSafariの機能として組み込まれているため、iOS用アプリからのアクセスの場合にはこの制約を受けない。たとえばアップル自身のNewsアプリや、各ニュースサイトが独自に提供しているアプリなどは、それぞれのアプリごとの実装に依存すると思われる。

ブラウザのみに依存しているケースは要注意

アプリ経由でのコンテンツ流通を強化しようとする狙いもあるのかもしれない(写真はApple Music)

現時点で、過度に大きな期待(あるいは懸念)は無用だと思うが、しかし長期的にはこうした取り組みが、デジタルコンテンツビジネスの流れを変えていく可能性はある。

たとえば、インターネットコンテンツの閲覧がPC中心からモバイル中心となり、アクセス数は大きく増加したが、一方でデジタル広告の効果的な見せ方には制約が増え、結果として広告単価の下落を招いた。また通信量の爆発的な増加に伴って導入が進んだ、携帯電話会社による通信容量制限なども、モバイル端末向けのデジタル広告が忌み嫌われる原因となっている。

こうした流れを受けて導入されるContent Blockerは、大なり小なりインターネットにおける広告事業の枠組みに何らかの影響を与えることは間違いない。とくにiPhoneにおけるニュースの見せ方がブラウザのみに依存しているケースは細心の注意が必要になるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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