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スレッズで「客の愚痴」つぶやく飲食業界人の悲哀 実名や店の名前を出して…背景には猛烈なストレス?

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  • 大関 まなみ フードスタジアム編集長/外食ジャーナリスト
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実名で愚痴を発信することのリスクは大きい。ネガティブな話題は炎上につながりやすく、ましてや店名を出していたら実際の集客にも大きな影響を与えることは想像にかたくない。

今、Xをはじめとするネット上では毎日何かしらの炎上が起こっている。もはやおなじみとなってしまった光景だが、いちネットユーザーの発言に何かの拍子で火がつき拡散されていくという事象は、ここ最近で増えてきた出来事だ。

さかのぼればインターネット黎明期の1990年代から「炎上」の原型となるような出来事は起こっていたが、その多くは企業の「やらかし」への批判が中心だった。一般ユーザーが炎上に巻き込まれるようになったのはもっと後の話となる。

今のThreadsを見ていると、Twitterが登場したばかりの2000年代後半を思い出す。当時のTwitterは今ほどユーザー数もおらず、拡散されても範囲は限定的だった。それが今や多くのユーザーが参入し、多様な考えや思想が入り交じるようになった。

何か不用意な発言をしようものならあっという間に拡散。インフルエンサーが炎上を煽動することもあり、マスメディアのニュースのネタにすらされ、日本中の知るところとなってしまう。そんな状況から人は炎上を恐れ、発言にはそれまで以上に細心の注意を払うようになった。

実際に、総務省が出している「ネット上での炎上を巡る議論」によれば、炎上が劇的に増加したのはモバイル端末とSNSが本格的に普及し始めた2011年からだという。

(画像:総務省HPより)

昔のインターネットは真逆で、リアルでは言えない本音を吐く場所だった。むしろそれがネットの醍醐味であり、誰も言えないことを言う「毒舌」が格好いい、という雰囲気すらもあった。大っぴらに言えなかったことを言えてスッキリするし、見ている人も一部であるから差し支えがない(と思われていた)。

ところがネットユーザーが増え、次第にリアルとネットの境目があいまいになったことで、リアルで言えない本音はネット上でも言えなくなっていった。

そんな中、2024年に突如現れたのがThreadsだ。まだユーザー数の少ないThreadsなら拡散の危険が少なく、愚痴を吐いても炎上しないだろう、と思った人たちから抑圧されていた本音が噴出している。誰かが愚痴っているのを見て「ここなら大丈夫」という認識が広がり、連鎖が起きているのが今のThreadsの現状だ。

飲食店だけでなく、美容師の間でも「Threadsが愚痴だらけ」という話もある。そうした業界内での愚痴を話すのにもってこいの空間と思われているようで、ここだけはまるで15年前に巻き戻ったようだ。Threadsの叫びは、ある意味平和だった時代のインターネットへの渇望なのかもしれない。

Threadsもしょせんネット。不用意な発言はご注意を

不特定多数に向けて自分の考えを発信したい。だけど、都合の悪い人に見られたり、炎上したりはしないでほしい。そんな願望がThreadsに実名での愚痴が集まる理由だが、しょせんThreadsも全世界に開かれたインターネットであるということはゆめゆめお忘れなく。インターネット上にある限り、誰が見ているのか、どのように解釈されるのか、はわからない。「Threadsだから安心」などということはまったくない。

今後、Threadsのユーザーが増えていくかはわからない。しかし、Threadsで発言することはインターネット上に記録されることは間違いなく、不用意な発言で店や自身の価値を毀損してしまう可能性は十分にある。たちの悪いことに世の中にはインプレッション目的で炎上ネタを探している人もいる。

「実名でこんなこと言っていいの?」という疑問の声はすでに上がっている。いつかThreadsで炎上してしまう飲食店が出てきてもおかしくないだろう。

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