三菱「アウトランダー」は別物に進化を遂げた 大幅改良で何が変わったのか

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ショックアブソーバーのサイズを上げると、減衰力の立ち上がるレスポンスが向上し、しっとりとした動きになって、乗り心地がよくなる。

形状としては変わりないものの、断面を拡大したり、板厚を上げたり、ダイナミックダンパーを仕込んだりしようとすると、新作せざるをえなかったとのこと。

それに合わせてボディ側もサスペンション取り付け部を局部的に補強するなどした。

そして、すべてをやったうえで、ハンドリング担当者には、最も条件的に厳しいヨーロッパへ何度も赴き、しっかり走り込んで性能を確認したという。

操縦安定性や静粛性は日本車勢ではトップレベル

実際、高速巡航時の操縦安定性や前述の静粛性は、同クラスのSUVにおいて、日本車勢ではトップレベルで、定評あるドイツ勢に対しても遜色ない水準に達したように感じられた。このように、改良の成果の数々をドライブして即座に直感する、素晴らしい完成度であった。

日本市場ではこれまでどおりPHEVのほうが売れるだろう。筆者は、ガソリン車にももっと多くの人に目を向けて欲しいと個人的に感じた。そのくらいガソリン車の洗練度の高さには印象深いものがあった。

2代目アウトランダーをめぐっては、「2013年1月の発売直後にバッテリーの過熱問題が起こって以来、アウトランダーPHEVの販売は振るわない」(都内販売店の店長)との声も聞かれる。そうした悪条件を乗り越えて、開発陣がこのクルマを良くしようと本気で取り組んだことがヒシヒシ伝わってくる。自動車メーカーがマイナーチェンジで大胆に変えるとしても、外観のデザインぐらいのことが多いのだが、アウトランダーに限っていえば中身も含めてまるで「別物」とも呼べるほどの大きな進化を遂げたといっていいだろう。

(撮影 : 中川雅博)

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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