非上場化を「第2の創業」と位置づけたい--マスプロ電工社長 端山佳誠
当社が上場したのは1991年。それ以来、長期的に見ると株価はずっと右肩下がりだった。テレビ受信用のアンテナを作っているだけでは株式市場の評価は得られなくなっており、新しい事業が必要だ、という認識は以前からあった。とはいえ、そうすぐには新事業を立ち上げることはできない。どうすればいいか、悩み続けていた。
新事業をすばやく立ち上げるためにM&Aも検討したし、MBOについてはここ数年、頭の中にあった。海外事業や新事業を育てるには大きな投資が必要で、当然のことながら失敗のリスクも高い。しばらくは大きな損失が出るかもしれない。そうしたリスクの高い改革を上場したまま行うのは難しいのではないか、と考えるようになっていた。
決定的な出来事があったのが今年3月だ。前期(2011年3月期)は地デジ化の受信設備の工事が多く、売り上げ、利益とも急拡大し過去最高だった。秋口から勢いがあり、業績見通しの大幅な上方修正も発表した。しかし、なかなか株式市場が反応を示してくれない。それどころか地デジ完全移行後に売り上げ、利益とも大きく落ち込むことが織り込まれ、株価は大幅に下がってしまった。
地デジ化を追い風にして株価を上昇気流に乗せ、地デジ化完了後はそれとクロスオーバーするように海外事業、新規事業で補っていく。それができれば、株価を引き上げられると考えていたのだが、このもくろみは甘かった。このままでは株価はどんどん下がっていく。防衛策を取っていないので敵対的買収を仕掛けられるリスクもある。そこでMBOを決断した。
非上場化のデメリットは小さい。かつては上場していることが一流企業の証だったが、最近ではそんな考え方は薄らいでいる。優秀な社員を採用するにも、上場か非上場かではなく、いったい何をやっている会社なのか、という点が重要だ。取引先の反応が心配だったが、非上場化してもこれまでどおり監査は受けること、品質を最優先する方針はまったく変わらないことを説明して回り、ご理解いただくことができた。