「武藤議員問題」は、自民党にも責任がある

そもそも、なぜ彼は議員になれたのか

滋賀4区の事情に詳しい関係者はこう説明する。

「もともと滋賀4区は第二次小泉改造内閣で農水大臣を務めた自民党の岩永峯一氏の地盤。岩永氏は2008年9月に健康を理由に政界引退を表明しており、その跡を三男の裕貴氏が継ぐことになっていた。ところが宗教団体からの献金を収支報告書に記載していなかったことが発覚。問題が大きくなったため、裕貴氏は出馬を断念し、その代わりに立てたのが武藤氏だった」

発端は2009年2月の朝日新聞の報道だ。岩永氏は滋賀県甲賀市に本部を置く「神滋秀明会」から6000万円を受けながら、政治資金収支報告書に記載していなかったという事実が発覚した。そればかりではない。岩永氏は寄付を否定したが、宗教団体側は「政治献金として処理した」と明言するなど、単なる「記載ミス」ではすまなくなっていた。

こうした政治資金問題に加え、2009年には民主党に追い風が吹いており、自民党に非常に厳しい状況であったことも、岩永裕貴氏が出馬を断念した理由である。そこで候補を公募することになり、応募してきたひとりが武藤氏だった。

なぜ自民党の公認を勝ち得たのか

他にも地元甲賀市出身で、浜松市議や静岡県議を務めた大岡敏孝氏も応募したが、こちらは最終選考で落選している(大岡氏は2012年の衆院選で自民党から滋賀1区で当選、2014年も当選し議員現職)。公認を勝ち得たのは、地元出身ではないうえに左派から転向した当時29歳の武藤氏だった。その内情について、関係者はこう述べている。

「普通に考えれば、滋賀4区の公認候補は大岡さんにすんなりと決まったはず。しかし大岡さんが公認を得れば、滋賀4区から永遠に岩永家は出られなくなる。そこで大岡さんを外し、武藤氏に公認を出した。地元と繋がりの薄い武藤氏ならいつでも放りだせるからだ」

すなわち、とりあえずは当選する見込みのない武藤氏を立てることで逆風の選挙をやりすごし、自民党に有利な状況になればすげ替えようという意図があったことが推察できるのだ。もちろん、「そうだ」と認めるはずはないが、政治の世界ではいかにもありそうな”大人のやり方”である。

だが、このはかりごとは想定通りには進まなかった。2009年8月の衆院選で落選した武藤氏を追い出すことはできなかったのだ。ひとつは自民党本部がそれを渋ったからである。これについて関係者はこう明かす。

「2009年の衆院選で武藤氏を擁立したものの、武藤氏の地元での評価は芳しくなかった。そこで党第4支部の関係者が上京し、党本部を訪問。幹部に武藤氏の公認を外すように頼んだこともあった。ところが党本部は『公認は県連マターの話だ。そちらで処理しろ』とその要求を拒否。そのうちに解散となり、やむをえず武藤氏をそのまま公認したら、2012年12月の衆院選で当選してしまった」

武藤氏も衆院選にこだわっていたわけではない。2011年4月の滋賀県議選に近江八幡市選挙区からの出馬に意欲を見せたが、同区からは有村治子少子化担当大臣の兄の国俊氏が出馬することになっていたため、滋賀4区に張り付かされた、という事情もあったようだ。

すなわち武藤氏を利用しようとして計算違いをおかしてしまったことが、自民追い風の前回の衆院選で「武藤貴也衆院議員」を誕生させ、また今回の騒動を起こしたということになる。

その自民党は武藤氏の離党届をすぐさま受理し、すでに無関係を装っている。これについて民主党は「武藤氏は自民党が公認して当選させたのだから、自民党がこの問題について調査すべきだ」と主張しているが、代表を務めた鳩山由紀夫氏が“奇行”を重ねている件については「すでに離党している方だ」と無関係を決め込んでいるため、その言葉に説得力がない。そして野党第2党である維新の党は、柿沢未途幹事長が山形市長選で野党候補を応援したことをきっかけに、大阪系と東京系が分裂も辞さないほどに揺れていて、とてもそれどころではない。

結局のところ武藤氏は、上西小百合衆院議員と同様、議員辞職を否定して任期満了までその地位に居座るつもりだ。だが27日発売の週刊文春は、武藤氏の次なるスキャンダルを掲載しており、その立場は厳しくなる一方。釈明会見で武藤氏は「今回の件はプライベートな問題」と述べたが、その主張には違和感がある。ここで引導を渡すのは、政党の役割ではないだろうか。

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