発送配電を分離せず現場力を生かす再生を--『東京電力 失敗の本質』を書いた橘川武郎氏(一橋大学大学院商学研究科教授)に聞く

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──原発公社論もあります。

原発は造るときから国の助けがないとできない。使用済み核燃料の再処理も民間会社にできることではない。民間の枠の中に入るのは元から難しい。同じ会社の中に原発部門があるため、国との関係で癒着が起こることにもなる。すっきり切ったほうが経営としてもやりやすいはずだ。

ただし、加圧水型炉の四国電や九電は原発の成績がいい。それなりの経営努力も効いている。四国電は特にそうで、新しい設備に随時替えて、稼働率82%と、全平均65%のぐっと上を行っている。そういう事例もあるので、原発を切り離すとしても、事故を起こしたのと同じ沸騰水型炉から進めていくことだ。

──もちろん安全性優先です。

東北電の女川と東電の福島第一との違いは、明治以来3回大津波に襲われている現場の危機意識の違いが大きい。原発は、ストレステストではなく安全基準で規制しなければならない。過去の最大の津波や揺れでもセーフか、同時に新事実にはすぐ対応するという更新基準にも注意を払う必要がある。

──電源構成としては?

2030年における日本の発電電力量ベースでの電源構成のベストミックスは、原子力20%、再生可能エネルギー30%、火力40%、それに節電10%という脱・原発依存シナリオでどうか。

著者 きっかわ・たけお
1951年和歌山県生まれ。東京大学経済学部経済学科・同経営学科卒業。東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。青山学院大学経営学部専任講師、同助教授、ハーバード大学ビジネススクール客員研究員、東大社会科学研究所助教授、同教授などを経て、2007年より現職。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司=週刊東洋経済2011年11月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

『東京電力 失敗の本質』 東洋経済新報社 1890円 225ページ


  
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