発送配電を分離せず現場力を生かす再生を--『東京電力 失敗の本質』を書いた橘川武郎氏(一橋大学大学院商学研究科教授)に聞く

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──そのインパクトは大きい。

本来は電力会社が競争に挑んでもいいはずだが、そうはならない。事実上のカルテルがある。しかし、専門家に聞くと、それも独占禁止法違反でもないようだ。長年のあうんの呼吸でやっているからだそうだ。その分、買い手の側が競争を仕掛けざるをえない。

──電力会社も電源に個性がありません。

それぞれ個性的な電力会社になってほしいものだ。具体的なイメージとしては、たとえば北陸電力は水力が電源構成の23%に達している。原発は売り払って再生可能エネルギー30%を会社の看板にしてはどうか。中部電も浜岡原発の再開は難しく、停止させた国に責任を持たせ、裁判を起こしてでも原発を買い上げさせて、中心電源がLNG(液化天然ガス)の会社になればいい。こういった形で、各社が特徴を持った経営をすれば、それぞれいろいろな意味でいい会社になっていくだろう。

──原発はどうするのですか。

加圧水型の炉は稼働率が高い。そのタイプを持つ九電、四国電力、関電は原発主力の会社でいいのではないか。西日本6社で残りの中国電は石炭電源主力の会社になれるし。西日本で本格競争が始まれば、各社特徴を出さなければ価格勝負に勝てない。電力業界のイメージも活性化していく。これは発送配電分離をしなくてもできることだ。

もともと総括原価方式の家庭用電力の自由化をやめたのは、原発投資を優先したためだった。値下げ競争が始まると、財務的に苦しくなると考えたのだ。

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