意外と知らない、最新鋭旅客機のすごい技術

ANAとJALを支える機体の強みとは?

この旅客機の最大の特徴は、従来のアルミ合金(ジュラルミン)に代わって機体全体の50%に炭素繊維複合材という新素材が採用されたことだ。炭素繊維複合材は、鉄の4分の1ほどの軽さで、強度は鉄の約8倍。これをボディ構造に多用したことで、同サイズの従来機に比べて燃費性能が20%も向上している。世界で最初に787を受領したANAの機長は、コクピットに座った感想を次のように話していた。

「たとえば東京/大阪間で重量を(従来機である)767より10万ポンド(約45トン)重くして飛んでも、787の燃料消費量はほとんど変わりません。10万ポンドをお客さまや荷物に換算すると、かなりの量を増やすことができますし、反対に同じ重量で飛ぶときにはどんどん飛行距離を延ばせるわけです。787は飛行距離が延びれば延びるほど、真価を発揮できる機種だといえますね」

長距離国際線を運航する場合は、多くの燃料が必要で、これまではジャンボ機(ボーイング747)などの大型機に頼らざるを得なかった。その大型機を飛ばすには、一度に400人以上の乗客が利用する路線でなければ黒字にはならない。1回のフライトで売り上げの3割が消えてしまうといわれるほど燃料費コストが重いためだ。

その点、燃費効率に優れコストを抑制できる787なら、150~200人の乗客数で長距離を飛ばしてもビジネスとして成立する。従来は不可能だったさまざまな路線に就航できるわけだ。JALのボストン線やヘルシンキ線、ANAが10月に開設を予定するブリュッセル線なのは、その最たる例だろう。

2014年夏には787のボディを延長した787-9も完成し、ANAは羽田からミュンヘンやハノイなどの路線に、JALは成田からジャカルタなどの路線に投入している。また今後を担う大型機の主力機材としては、ANAは開発が進むボーイング777の次世代型777Xを、JALはエアバスが送りだした最新鋭機A350XWBを選定。これら最新鋭機には、さまざまな魅力がある。

旅客機の窓を大きくしたい

『これだけは知りたい旅客機の疑問100』秋本 俊二 (サイエンス・アイ新書) 。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

拙著『これだけは知りたい旅客機の疑問100』でも詳しく解説しているが、そのひとつは「窓」だ。「客室の窓がもっと大きければいいのに……」。サービス向上に役立てようと航空会社が乗客へのアンケート調査を実施すると、ときどきそんな意見が書かれてくるそうだ。窓が大きければ、たしかに地上の景色もよく見えて楽しい。鉄道の世界では、窓を大きくとった観光用の車両が走っている。

しかし旅客機の窓は、構造上の理由でむやみに大きく作ることはできない。胴体部分を構成している何本もの柱が邪魔をして、スペースを十分に取れないのだ。

旅客機の外板には厚さわずか1~2mmのアルミ合金が使われ、その薄い材料で機体の強度を保つため、頑丈なフレームや縦通材(ストリンガー)を組み合わせた「セミモノコック構造」で設計されている。客席の窓は骨組みがない部分に作る必要があり、設置できるスペースが限られてしまう。仮に骨組みを減らすと、強度を維持するため外板を厚くしなければならない。そうすると機体重量が増し、飛ばすことができなくなる。窓が小さいのは、旅客機の宿命だったのだ。

機体はフレームや縦通材(ストリンガー)を組み合わせた「セミモノコック構造」で設計
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