「子どもが大きくなったときに、“ずっとこんな家に住んでいたんだ”と思ってほしくなかったんです。気持ちを新たにして進んでいかないといけない。“部屋が綺麗になったらどうしたい?”と子どもたちに聞くと、“あれしたい、これしたい”とたくさん夢を話します。夢ではなく普通のことなんですけどね。
家が綺麗になることを子どもたちはすごい楽しみにしています。とにかく、全部いったん綺麗になったら、何かいい方向に向かうんじゃないかなって。私の勝手な思いなんですけど、やっぱり変わりたいです」(母親)
すぐにゴミ屋敷に戻ってしまう人たち
現場に入ったスタッフはいつもより多めの8人。パッカー車(ゴミ収集車)が来る時間は決まっているので、時間重視でどんどん作業を進めていく。
キッチンは冷蔵庫、電子レンジ、IHクッキングヒーター、テーブルだけ残し、ほかは全部処分する。「ゴミの中からはいろんなモノが出てくると思いますが、すべて捨てていいです」と母親も本腰を入れたようだ。
片付け開始から5時間半。床のダメージは大きく、引き続き住むにはリフォームが必要になるが、ゴミもゴキブリもゼロになり、家はまっさらな状態になった。
「広っ。そう、こんなんやったんです。これはすごい、広い」
手が震えていた見積もりのときとは、母親の表情は明らかに違った。空になった部屋を前に自然と口数も増える。
「こんな状況を見せるのも嫌だし、見積もりの後も片付けの依頼をやめようかと何度も思ったんです。でも、じゃあどうする? 自分一人でできる? すごい葛藤がありましたが、頼んでよかったです。とにかく助けてほしいっていうのが一番で、1人では何もできない状態だったんで。
私の悪い癖でお酒に逃げてしまうんです。イーブイさんに電話をしたときもお酒を飲んでいて、でもドキドキして酔えなくて。でも、あのとき勇気を出してよかったと思います。最悪の状態になってどうにもならなくなる前に頼むべきだったなとあらためて思います。隠すんじゃなくて、自分でできないからこういうことになっているわけですから」
しかし、心に留めておきたいのは、ゴミ屋敷の片付けはゴールではなくスタートであることだ。ここで終わった気になってしまえば、すぐにまたゴミ屋敷に戻ってしまう。
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