このシングルマザーも例外ではなく、とくに生ゴミが目立つゴミ屋敷には酒の空き缶がたくさん捨てられている傾向があるという。現場で作業をしていた文直氏の弟・信定さんが話す。
「不幸が続いたり、精神的につらいストレスがあったり、職場の環境や近隣住民との関係が上手くいかず、お酒に逃げてしまう。飲んでいろいろ忘れたい、飲んで楽になりたいというのはあるかもしれない。酒で無気力になってしまい、“もうどうでもいい”と思ってしまった時期があったと、今回の依頼者さまもおっしゃっていました。そこから(生活が)狂い始めてしまったのかもしれません」
家が生ゴミだらけになってしまった理由
一体、この家に何があったのか。夫と離婚後、シングルマザーとして3人の子どもとこのゴミ屋敷で暮らしてきた母親が語った。
「4年ほど前に父が亡くなったのですが、死に目に会えなかったんです。そこで気持ちがドンと落ちてしまいました。ただ、そのときは今ほど部屋は散らかっていませんでした。
その1年後に今度は妹が亡くなったのですが、遠方に住んでいることもあって、また死に目に会えませんでした。そこから、もう何もする気力がなくなってしまいました。家が散らかり出すと仕事もどんどん上手くいかなくなり、人間関係も悪化し、近所の人に会うことすら怖くなっていきました」
ゴミ捨ても日中ではなくあえて夜中に行くようになった。すると、次第に生活のリズムが崩れ始め、さらにメンタルが病んでいった。そんなとき、マンションのゴミ捨て場で、こんな光景を目にした。
「自分が捨てたゴミではないんですが、他のおうちのゴミを漁っている住人がいたんです。いえ、“漁っている”と言ったら悪いかもしれません。捨ててはいけないものが入っていたのかもしれません。
とにかくそれを目撃して以来、自分がちゃんとゴミの分別ができているのかどんどん不安になっていきました。身内の不幸が続いて気分的に落ちていたときだったので、なおさら人に会うのも怖いし、ゴミをチェックされたらどうしようと考えてしまい、なかなかゴミを捨てられなくなってしまいました」
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