「負のスパイラル」阻止に金融面の役割は大きい--日本銀行副総裁 山口廣秀

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──警戒すべき日本への影響は。

世界経済への影響と同様に、日本への影響にも三つのチャネルがある。ただ、欧州と日本の間では貿易量はあまり多くなく、実物面のチャネルを通じた影響はそれほど大きくないだろう。

一方で、金融面とマインド面を通じたチャネルの影響には留意すべきだ。金融面のチャネルについては、グローバルな影響という点で、株価の下落、安全通貨の為替レートの上昇ということがある。日本においても、すでに株価が下落し、円が安全通貨と見られて円高が起きている。また、マインド面でのチャネルとしては、グローバルな株価の下落がわが国にも波及し経済主体のマインドに悪い影響を及ぼしているように思われる。円高も企業マインドにマイナスのインパクトを及ぼしている。

先進国に共通する病弊 日本の立ち直りはあるか

──円高で日本企業はさらに効率化を迫られているのでは。

それは事実だろう。円高でも収益を確保できるように、企業はさまざまなリストラを実施している。さらに円高メリットを活用してグローバルな展開を志向し始めている企業も少なくない。

──日本の金融セクターへの影響をどのようにとらえていますか。

現状、国内では金融機関の経営は総じて健全であり、金融システムの頑健性も維持されている。国内金融機関の欧州周縁国向け与信はごく限定的であり、欧州ソブリン問題の直接的な影響は少ない。ただ、株安が生じると、国内金融機関にとってはBS上の影響は小さくない。現在、株安に伴い保有株式の含み損が生じているが、これは内外金利の低下から生じた保有債券の含み益によって相殺されている。また、日本の金融機関の資金調達コストに大きな影響は見られていないし、金融市場は安定しているといえる。ただ、今後ともこうした状態が続くのかについては、油断なく見守る必要がある。

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