日産は2024年4~6月の決算資料で「競争が激化する中、シルフィは上期を通して中国市場の内燃機関の乗用車セグメントでトップの座を維持しました」と説明しているが、「ガソリン車でトップ」という位置づけが、中国ではさらに時代遅れ感を帯びてしまう。
BYDはその後、主力車種の多くをリニューアルのタイミングで旧モデル価格から値下げした。
日本では「ATTO 3」の名称で発売されているコンパクトSUV「元PLUS」は、日本での価格が450万円、中国では最廉価グレードが11万9800元(約240万円)。ガソリン車駆逐に向け、勝負に出ているのがわかるだろう。
ガソリン車の販売代理店が悲鳴
BYDが値下げすれば、ほかのEVメーカーも追随する。販売のノルマがあるので、ガソリン車も店頭で値引きせざるをえない。シルフィからBMWまで、実売価格はかなり下がっている。
BYDは車体のコストの多くを占める電池の値下がりと、生産台数が増える規模の経済で値下げ余力があるのに対し、黒字化できていないEVメーカーや、製造コスト削減の余地が乏しいガソリン車にとっては、値下げはタコが自分の足を食うような行為だ。
そしてメーカー以上に苦しいのが、ガソリン車の販売代理店だといわれる。
中国自動車販売店大手の広匯汽車服務集団は今年7月、株価が低迷し上場基準を維持できなくなったため、上場を廃止すると発表した。
同社はBBA、トヨタ、ホンダなど海外合弁ブランドの自動車販売を手掛けているが、販売減や価格競争で業績が悪化していた。
今年5月下旬にはポルシェと中国のディーラーとのトラブルも表面化した。
ポルシェは世界販売の4分の1を占める中国で2022年、2023年と2年連続で販売が減少した。2024年1~6月の販売台数は前年同期比33%減の2万9551台で、世界販売も7%減の15万5900台にとどまった。(ちなみに日本は過去最高の4676台を記録、5年連続で増加している)
現地メディアによるとポルシェ中国は2024年の販売目標を7万台に設定していたが、ディーラーは値引きを拡大して販売するため、ほとんど利益が取れない。ディーラーは仕入れ拒否も辞さない姿勢で、損失の補填を求める抗議文書をドイツの本社に送った。ポルシェ側は、ディーラーの訴えを無視できず、中国のCEOを9月1日付で交代すると発表した。
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