「ポスト資本主義」では日本が再び先進国になる訳 マルクス・ガブリエル氏が語る日本の可能性

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――倫理的資本主義が実現した場合、富裕層を減らすことなく、貧困層を減らすことはできるのでしょうか。

私は、哲学者ジョン・ロールズの有名な考え「格差原理」を全面的に信じています。ロールズによると、経済的不平等は「富める者がより裕福になるという事実は、貧しい者も利益を得るという事実と相関することによってのみ正当化される」。

理想はその距離が少しでも縮まることで、いずれにしても、このように経済的水準が向上できれば、現代経済では理想的な形で富が蓄積されれば貧困層が減るのです。

昨年ドイツは日本を上回る第3の経済大国になりましたが、その一方で右傾化が進んでいます。その理由は、インフレに対して十分な補償がされなかったからというのと、もう1つ、ドイツはグリーンエコノミーを推進していますが、これにはコストがかかる。

そこがよく理解されておらず、不服に思う有権者が極右に移行しているのです。不平等が問題なのではなく、トリクルダウン効果が必要なのです。それを行うのは企業の責任であり、政治の責任ではありません。

「貧困を生み出す企業」を罰する?

――著書では「貧困をなくすには、制度ではなく、貧困を禁止する法律が必要だ」とあります。

貧困を生み出す企業が「罰せられる」と想像してみてください。ヨーロッパでは、サプライチェーン法(サプライチェーン上における人権や環境基準が遵守されていることの確認の義務付け)が大きな議論になっています。

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法律を設計するには優れた専門家の力が必要ですが、この法律を通じて企業の雇用状況をチェックでき、無責任な解雇を測定でき、直接的、あるいは、間接的に貧困を減らすことに貢献できます。

日本も貧困がどのように生じるのかを研究し、それを経済指標で測定し、貧困を生み出す原因になっている組織などへの刑罰を開発する。貧困を引き起こした企業には廃業のリスクもあるのです。もちろん、これにはきちんとした経済指標が必要です。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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