「ポスト資本主義」では日本が再び先進国になる訳 マルクス・ガブリエル氏が語る日本の可能性
――ただ、日本は変化に疎いというか、「変化を拒む国」だと思うのですが。
もちろんすべての変化がいいわけではなく、社会的変化に対して慎重であることも理解できます。だからこそ、変革ではつねに最善の方法をとらなければいけない。そこで登場するのが倫理資本主義です。これは、“消費者も、生産者も、起業家も、経営者も、労働者階級も、誰もがいいことをして利益を得る”というシンプルなものです。
――いいことをして利益を得る?
私たちは皆、いい睡眠を得たいし、同僚と良好な関係を維持して、いい環境で働きたい。そして平和と繁栄を望んでいる。企業がこれらに向けて貢献すれば、大きな利益を上げる可能性が高くなる。
もちろん、そこへ到達するには、個人の小さな決断1つひとつが、「いいことをしたい」という願望によって実行される必要があるし、それを個人、集団(家族)、組織(企業、社会)にスケールしていくことも必要です。
道徳的な消費を促す商品化があればいい
――著書では、倫理資本主義において過剰な消費を抑制する必要性を述べていますが、現実にはなかなか難しいのではないでしょうか。
それは個人ではなく、企業側の問題ですね。私たちが消費する商品を生産するのは企業ですから。私の主張は、消費者個人が消費行動を道徳的にすべきということではなくて、サステナブルな企業がそうではない企業を経済的に凌駕するというイメージです。
具体例を挙げましょう。約9年前、私はチューリッヒにあるスイス最古のベジタリアンレストランに行きました。そこの料理は街のどのレストランよりおいしく、それを理由に再訪したくなりました。ベジタブルバーガーのような商品が競合の商品をクオリティで勝れば、顧客もいいほうを選ぶのです。
――たんに環境保護や動物愛護のためではなくて。
それからもう1つ、価格の問題からサステナブルな商品を選びにくい人のために、購入しやすい製品を開発する必要もありますね。
――そういった倫理資本主義を実現させている企業は。
ありますよ。1つは、気候変動に関する世界最大の情報プラットフォームであるスウェーデンのSNS「We Don’t Have Time」。これを立ち上げたイングマ・レンズホッグは、グレタ・トゥーンベリの有名な写真を撮った人物で、気候変動活動家です。
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