2024年6月期の決算短信によれば「免税売上は大きく伸長しております」と控えめな表現にとどまっているものの、決算概況によると、インバウンドの免税売上高は1173億円にも至っているようだ。
これは売上高の約2兆円と比べると支配的な比率ではない。しかし5%以上を占めており、きわめて大きな金額といえる。
その比率を獲得した勝因として同社は「競合に対する価格力」「品揃え」「深夜営業」「変化対応力」をあげている。私は「変化対応力」で追記したいのはレジの強さだ。同社は免税の対応速度を上げ1分短縮するなどの試みをしている。これは無視できない。かなり多くの外国人消費者をこなしているのだ。
なおドン・キホーテの強さを補足しておく。日本全体の訪日外国人数の増加比率よりも、ドン・キホーテの免税売上高増加比率のほうが大きい。これは称賛に値するはずだ。また、円高になっても円換算した売上高が高い。その実績は高く評価されていい。
ドン・キホーテの強さ
ところで、私は幾度とテレビなどの企画でPPIHやドン・キホーテの社員を取材している。同社から怒られるかもしれないが、同社の社員の発言は面白くない。
これは信じられないかもしれないがほめ言葉だ。
というのも、他社であれば「こういう秘策があって売り上げを伸ばしました」という話が出てくる。いかにも広報好みのフレーズが出てくる。しかし、PPIH、ドン・キホーテの方からは、こういった飛び道具の話が出てこない。「普通のことを普通にしただけです」といった当たり前の話しか聞こえてこない。ドン・キホーテのイメージは、むしろ過激で危うい感じがある。ただ、実際には常識的で、そして“つまらない”のだ。
この“面白くない”とか“つまらない”といった言葉は、繰り返すとほめ言葉であり、非常に常識的な店舗運営を感じさせる。消費者が買いたい商品を聞き、そして販売する、という当然の態度だ。
たとえばそれを反映しているのは「マジボイス」などだろう。同社はmajicaという買い物アプリを通じて、不満を聞き取ったり、商品についての本音を聞いたりしている。同社の社員によると、商品についての意見は愚直なほど受け入れ、次の商品開発に活かす。商品を作るメーカーよりも消費者の声を拾い上げ、それを商品開発に使い、さらに他の小売店を引き離す。そして決算の関連資料でも、こういった当然のことを当然のように愚直に繰り返すといった話が繰り返されている。
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