私の中国人経営者向けの講演に戻る。ドン・キホーテとはどのような位置づけだったか。「もっといえば、学校のクラスでヤバい生徒が買い物をする店舗だったんですよ」と。もっといえば、DQNと称される消費者向けの店舗だった。
中国人の経営者にとってはドン・キホーテがかつての日本でDQNが集まる巣窟という話からはじめると、その事実は意外のようだ。私が中学生のころ、ユニクロで服を購入した同級生が「ダサい」と認定を受けた。同様の経験をした読者と相似形だ。
しかし、ドンキもユニクロも、たった30年で消費するに当然の場所になった。ブランドイメージは短期間で変わる。ドン・キホーテも「DQNが集まるヤバい場所」から「誰もが集まる場所」へ転換した。現在では、ドン・キホーテで買い物をしただけでDQNと認定する同級生はいない。またユニクロを着ているだけでヤバいと認定されるなら、今は昔で、現在ではセレブの日本人すらもユニクロを着用している。
話をドン・キホーテに戻すと、そのDQN的な場所から、国民的小売店の立場に昇華した。それは一つのジャパニーズ・ドリームといってもいい。
ドン・キホーテの躍進
ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは決算を報告した。驚愕する内容だった。なんと売上高は約2兆1000億円だった。
この数字の凄さがわかるだろうか。私が同社の異常さ(説明するのも野暮だが、もちろんほめている)に注目して取材や記事を書いたりテレビ番組で取り上げたりしてもらったりしたときは、10年前に売上高が1兆円になったのだが「こんな異端な小売業が1兆円を超え続けるはずはない」といわれた。
そこから幾星霜。というかたった10年しか経っていない。
その10年で1兆円どころか2倍の2兆円に達した。つい先日に発表された決算資料を見てみよう。以下は2024年6月期の決算による。
という好業績だった。35期の連続で増収増益となった。異端だったはずのドン・キホーテだが、上場企業のなかで最高の業績だ。これほどの記録は日本の上場企業のなかでも、ニトリなど一部の企業しか例がない。
そして、この売上高を実現した理由としてインバウンドに注目したい。というのも、同社はずっと海外での地道な宣伝を実施し、外国の居住者に、日本の訪問時にドン・キホーテに来店するよう多額のマーケティング費用をかけてきたのは有名だ。そして実際に多くのインバウンド客がドン・キホーテに来店している。読者もドン・キホーテに来店すると大量のインバウンド客と出会う経験をしているはずだ。
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