トランプ・バンス体制を作った「極右思想」IT富豪 「トランプ後継」バンス副大統領候補の素顔(下)

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ティールは自らの思想を「国家保守主義(national conservatism)」と呼び、「自由と民主主義は両立しない」として、「権威国家」を樹立する必要性を説いている。「権威国家」は「民主主義」より優れていると考えている。そして中央集権的な政府を分割し、テクノロジー企業がIT技術を使って管理する分散型の体制に変えるべきだと主張している。

ティールとバンスは「極右の思想」で一致

こうした理論は、中央集権的な連邦政府の解体を主張する「極右の思想」と一致する。ティールを通して、バンスは、こうした思想を共有し始める。

バンスの「政府論」もティールと同じである。彼らは、アメリカ政府はエリートの寡占集団に支配されていると考えている。「ディープステート(影の国家)論」である。

バンスは『Vanity Fair』のインタビューで「トランプは2024年の大統領選挙に出馬するだろう。トランプがすべきことは、行政機関の中堅官僚とすべての公務員を解雇し、私たちを支持する人々(注:極右の人々)に置き換えることだ」と語っている(2022年4月20日、「Inside the New Right, Where Peter Thiel Is Placing His Biggest Bets」)。

バンスは現在の政府組織に懐疑を抱いている。さらに現在アメリカで展開されている中絶やLGBTQの権利などを巡る社会的価値観を巡る「文化戦争」に関して、バンスは「文化戦争は階級戦争である」と発言している。

家庭観も家父長制を支持し、女性は妻として、母としての役割を果たすべきだと主張する。アメリカの白人の出生率の低下は、女性が子供を産まなくなったからだとして、リベラル派の女性を「子供がいない、猫と暮らす女性(childless cat ladies)」と語っている。副大統領候補になってから、この発言が取り上げられ、バンスはリベラル派から批判を浴びている。

『Vanity Fair』の記事の筆者は、バンスの考えを次のように表現している。「アメリカのシステムは自然に分裂するか、偉大な指導者が半独裁的な権力(semi-dictatorial power)を掌握する2つの可能性を示している」と書いている。「偉大な指導者が権力を掌握する」という言葉は、トランプをイメージしたのかもしれない。

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