超人気トランプ候補は、何を意味するのか 信条は「俺は賢い」「俺は金持ち」
答えはタイミングだ。彼はちょうど良いタイミングで出馬している。保守派は今、英雄を切望している。右派勢力は、オバマ大統領の任期中に実に苦々しい思いをしてきた。同時に、共和党の中枢にいる権力者層に裏切られたと感じているのである。
共和党右派であるティーパーティーは2009年にバラク・オバマ大統領がホワイトハウスに入るや否や登場した勢力だ。彼らにとっては、オバマはこの国の歴史で、もっとも急進的な左翼の大統領だ。彼らは、彼らのこの屈辱をはねのけてくれる候補者を待っていたのだ。トランプが体現しているのは、正にその英雄としての役割なのだ。
「私たちの大統領(オバマ)は全く何も分かっていない」とトランプはディベートで言った。「彼は無能者だと私は言いたい。しかしそう言うと感じが悪いので、そうは言わない」。
保守派はニュー・アメリカを嫌っている
トランプは、極右を喜ばせる論点を持っている。それが移民政策だ。「私は大きな壁を作る予定だ」と立候補を発表した際にトランプは言った。「そして、誰も私よりも良い壁を作る事はできないのだ」。
保守派は、この国で今起こっている事、多様化していることや、開放的になっているニュー・アメリカの出現が好きではない。右派はオバマ大統領の任期中にに行われた、さまざまな変革を破棄し、元に押し戻したいと本気で思っている。健康保険制度であるオバマケアについて、トランプは「大災害」「大きな嘘」と呼んでいる。
つまり今、保守派がやっているのは現政権への抵抗運動であり、トランプは抵抗の指導者なのである。彼のスローガンの「アメリカを再び強国にしよう!」は、古き良きアメリカを復活させる使命を持った抵抗軍への召集なのだ。
「この国は大きな困難にある」とトランプはディベートで言った。「私たちはもうこれ以上は勝てないくらいに勝つだろう」。
トランプは、権力者層に対抗して出馬している超億万長者である。彼は、保守派の英雄として出馬し、理解しやすい政治哲学を持っていない。しかし、今のところ上手く行っている。これでは、その人気の説明にならない。
彼の人気の秘密は何だろうか。それは、彼の背後に控えている同調者だ。彼は大衆主義者であると同時に、極右の過激派である。つまり反逆する男だ。反逆を喜びとする人は多い。そしてトランプは、最高の反逆者なのである。
(ビル・シュナイダー)
(ビル・シュナイダーは、 ジョージ・メイソン大学の公共国際関係学の教授。このコラムは彼の個人的意見である)
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