マウスで成功したアルツハイマー根治--『老いを遅らせる薬』を書いた石浦章一氏(東京大学大学院教授、分子生物学者)に聞く
アルツハイマー病では脳の前頭葉に老人斑がたまり、神経細胞が死ぬ。神経細胞が減ることでぼけが起こる。前頭葉以外には初めのうちはたまらないから、徘徊したりする。運動神経をつかさどる部分にはたまっていない。進行すると脳全体にたまってきて運動もできなくなり、寝たきりになってしまう。
──パーキンソン病は運動神経から始まります。
まず手が震える病気。アルツハイマー病とは違い、手の細かい運動をつかさどる神経細胞が死ぬ。しかし、普通の知的機能に関係しているところは、最初はまったく問題がないので、ぼけたりはしない。ひどくなってくると影響が出てきてぼけ症状も見えてくる。パーキンソン病の場合は二次的に前頭葉がダメになる。
──治療法は。
これは難しい。なぜパーキンソン病になるか、原因ははっきりわかっていない。1817年に発見されているのに不思議な話だ。だから、なりやすい人、なりにくい人もアルツハイマー病ほどにはわかっていない。ただ、家族性、つまり遺伝のパーキンソン病が10~20%程度出現する。
そのため、治療薬をどう作ったらいいかもはっきりしない。確かに中枢神経系の神経伝達物質ドーパミンでよくなることは臨床的にわかっていて、治療薬としてドーパミンアゴニストとL−ドーパが使われる。ただ、それも常用しているうちにだんだん効かなくなり、その量を増やしていかざるをえない。歳を取って効かなくなっては一層困るので、違う薬が試されたりしているが、決定打はない。
──どうしたらぼけない?
実ははっきりしている。毎日運動をする、食べ物に気をつける。この2点を心掛けることだ。最近はサプリメントに頼りがちだが、普通の暮らしをしていれば、足りなくなるものは基本的にない。