マウスで成功したアルツハイマー根治--『老いを遅らせる薬』を書いた石浦章一氏(東京大学大学院教授、分子生物学者)に聞く
──ベータアミロイドの蓄積具合が医学的にわかるそうですね。
PET(陽電子放射断層撮影)で見ることができるようになった。50歳を過ぎたらアミロイドPETで診断を受けるといい。たまりすぎの人は5年後なり10年後なりにぼけると予想がつく。そう診断されたら、少しでも悪くしないように薬を飲む。
老人斑ができやすいかどうかは遺伝子で調べることができる。遺伝子診断でベータアミロイドがたまりやすいと判明したら、薬を飲むだけでなく、運動や食べ物に気をつけることも必要だ。素因があるのだから年齢に関係なく注意しなければならない。たばこはやめ、脂っこいものも食べないほうがいい。こういった指示ができるのは遺伝子の研究が進んだおかげだ。
──家族性のアルツハイマー病があります。
大体40歳代でぼける。しかし、それはぼけ全体の1~2%で、遺伝子診断できる。今のところ、三つの遺伝子でぼけやすい人がいることがわかってきた。
──問題となる遺伝子を持っていたらどうすべきなのでしょうか。
ぼけるかぼけないかは遺伝要因が大きいというのが最近の研究だが、二次的な対応法はまだはっきりしていない。実は外国では、悪い遺伝子を持っていた場合はどうしたらいいかという処方が進んでいる。ところが日本では、入り口の遺伝子診断自体を公では認めていない。
──ぼけはアルツハイマー病に限りませんね。
いちばん多いのは脳卒中の後遺症。血管が詰まったり破裂したりして脳内の神経細胞が死ぬことでぼける。それがぼけ全体のほぼ半分を占めると見ていい。残りの半分のうち大きいのがアルツハイマー病によるといわれているもの。そのほかに前頭側頭型認知症など、いろいろな名前の認知症があるが、それらは5~10%程度だ。