企業のデータ活用「人材の社内育成と産学連携を」 国内初データサイエンス学部の滋賀大学長に聞く

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彦根城にほど近い滋賀大学の彦根キャンパス。データサイエンス学部の設立後に入学希望者は関西圏や中京圏を中心に広域化しており、認知度も高まっている(筆者撮影)

――トヨタグループと共同でビッグデータ分析の人材育成を目的に「機械学習実践道場」も実施しています。

トヨタグループの社内教育は2017年から始めた。機械工学などの人材が多いが、能力が高くバックグラウンドもあるのでデータサイエンスの領域を1年学べばすぐに社内でデータを扱えるようになっている。製造業では生産性の改善や研究開発の効率化など役立つ領域は幅広い。

現在では年間250人程度学んでいるが、習ったことはないだけで現場の人間は優秀だ。効果が出ているのでここまで繰り返し活用しているのだと思う。トヨタ側も現在はトヨタの協力部品会社で構成する協豊会まで枠組みを広げており、データサイエンス人材の養成に力を入れているようだ。この部分は他の大学の経験値とは異なっている。

――製造業では熟練技術者のノウハウをどう共有していくかが課題になっています。

大事な視点だ。現場で何十年も特定の装置や機器を扱って、詳しく知っている人材は多くの企業に存在する。にもかかわらず、どうしてこの人がここまでできるのか、企業側が把握できていないケースが少なくない。

個人のレベルが高いという部分もあるが、その人にとっては強みであるため教えたくないという背景もあるようだ。しかし、その人が辞めた場合は技術が途絶えて企業側も困ってしまう。この課題に対して、技術やノウハウがデータでわかるようになれば、そのまま活用できるようになる。

いままでは背中を見て覚える、という面もあったかもしれないが、カメラで撮影して動作解析もできるようになった。データサイエンスの領域では匠の技をデータで明らかにして可視化することで課題解決につなげられる。

データ活用には社長の意志が重要

――データ活用で日本企業は出遅れているように感じます。グローバルに戦っていくのに何が必要でしょうか。

社内人材をしっかりと育てるという視点が必要ではないか。企業側からすれば、外資系コンサルティング会社などに外注したほうが早いという考え方もある。ただ、そうやってデータを活用するシステムを作った場合、メンテナンス料金を取られるなど費用面の負担が大きくなる。加えて、社内人材が育ちにくくなる。大学との共同研究であれば、大学にも企業にも知見がたまる点でお互いにメリットがある。

――中小企業ならなおさら意識の醸成が必要ではないでしょうか。

関西の従業員数百名規模のメーカーで、社長が意志を持ってスマート工場の立ち上げに熱心に取り組んでいるケースがある。社内の複数人をデータサイエンティストとして育て、データを経営に生かそうとする狙いだ。このような事例は増えていく可能性がある。経営者がどこまでデータ活用の重要性に気づけるかが大切になるのではないか。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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