人民元切り下げで「通貨戦争」が新局面へ

アメリカの利上げにも影響か

 8月12日、人民元が切り下げられたことで、「通貨戦争」は新局面に入った可能性。米利上げへの影響も指摘される。写真はドルやポンドなどの通貨の交換レートの表示パネルの横を歩く女性、7月にモスクワで撮影(2015年 ロイター/Sergei Karpukhin)

[ロンドン 11日 ロイター] - 世界の「通貨戦争」は11日、新たな局面に突入した。中国による予想外の人民元切り下げで各国の通貨安競争が始まり、世界的な金融緩和がさらに長期化する恐れが出てきたためで、場合によっては米連邦準備理事会(FRB)の利上げ時期さえ後ずれするかもしれない。

通貨戦争という言葉は、ブラジルのマンテガ前財務相が2010年に、各国がこぞって輸出促進のために為替レートをあからさまに、あるいはこっそりと引き下げた様子を描写するのに用いた。だが近年、そうした動きは強まっている。

いくつかの先進国で政策金利がゼロとなり、量的緩和が拡大する中で、為替レートは景気を刺激したり、場合によってはデフレを回避する残り少ない有効な手段となってきた。だからこそ投資家は、中国が人民元を押し下げ続けるのではないかと懸念している。

調査会社インターマーケット・ストラテジーのアシュラフ・ライディ最高経営責任者(CEO)は「(今後)人民元の下落率が5─7%より大きくなれば、国際金融市場と中国の貿易相手にとっては深刻な問題になる」と指摘した。

欧州中央銀行(ECB)が3月に開始した量的緩和は、過大評価とみなされていたユーロの調整と、域内の多くの重債務国がデフレスパイラルに陥るのを防ぐ措置だったとの見方が多い。

また日銀が継続している大規模緩和も、円安を狙ったとみられている。

一方で中国はこれまで、上昇するドルに対して人民元の基準値をほぼ連動させてきたため、景気が減速して輸出が落ち込んだにもかかわらず、実効レートは過去1年間で10%強も跳ね上がってしまった。

しかし11日にこの基準値を約2%切り下げたことからは、他のアジア新興国の通貨切り下げを誘発し、米国との新たな貿易摩擦をもたらすリスクをあえて冒そうという中国政府の姿勢がうかがえる。

米金融政策への影響

ドルの実効レートは過去1年で20%上昇した。こうした実質的な金融引き締めが米国の輸出競争力を弱めて成長の足を引っ張り、企業が海外から得られる利益を目減りさせてきた。

シルバークレスト・アセット・マネジメントのチーフストラテジスト、パトリック・コバネク氏は「(人民元切り下げで)FRBは難しい状況に置かれた。FRBが(利上げを)遅らせる可能性が出てきた。このままの状況なら、利上げはより困難になる」と述べた。

米議会はこれまで10年間、中国が巨額の介入で人民元を人為的に低く抑えて不当に有利な輸出環境を享受していると批判し、中国に人民元の管理フロート制度に基づく変動幅を拡大するよう迫ってきた。

こうした米国の政策は、中国が10%成長を続け、毎年海外から数千億ドルもの資金が流入していた局面でこそ理にかなっていた。とはいえ、中国の成長率は25年ぶりの低い伸びが予想され、政府が海外への資金流出を外貨準備で穴埋めしている今、変動幅拡大は人民元の値下がりを意味する。

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