小説家「予期せぬ人生の変化」二拠点生活の大正解 築75年"超ビンテージマンション"に低予算投資
表層を変えると、家の雰囲気はがらっと変わる。人間が髪型やメイクを変えたら別人になるのと似ている。そして、メイクはみな本当に細かく丁寧にやるのといっしょで、リフォームも丁寧にやらないと粗が目立ってしまってよくない。
そういう意味で、DIYをする気もないという人は、最初からプロに頼んでもいい。変わるにせよ、変わらないにせよ、まずは、自分自身を知るところからはじめよう。
うまく壁が塗れると「まあどうせ剥げたってまた塗ればいいか」となる。コーキングが打てればあらゆる水回りの補修ができる。いまどき丸のこは5000円で売っていて、これさえ買えばツーバイフォーの木材で棚も家具もなんでもつくれる。ベッドも自作した。
新しい仲間の輪が、簡単にひろがっていく
そしてそのことを魚屋さんやほかのお店で話すと、自然と友達ができる。伊豆は古いリゾートマンションが並ぶまち。同じような物件に越してきた人々は、同じような悩みを抱えているからだ。
こんにちは、今日あんこうが安かったですよ。お手伝いに行きましょうか。情報共有し、知恵を出し合えば、新しい仲間の輪が、いとも簡単にひろがっていくのだ。これは都会の暮らしにはなかなかないことだった。
庶民の2拠点生活は、低コストで余剰資金でやるのが大事もしあなたが都会での暮らしや、自分が変われないことに不安や焦りを感じているのなら、セカンドハウスを買えとはいわない。まずはマンスリーやウィークリーで家を借り、場所を変えてみてはどうだろう。
もしかしたら私のように人が変わったかのように交流を楽しみ始めるかもしれない。あるいは友人のように畑をやりはじめるかもしれないし、ここなら犬を飼えると長年の願望に気づくかもしれない。ともかく変化があれば、結局は都会の家に戻ってもいい。
大事なのは余剰資金でやることだ。その投資や行動が命取りになるようなことだけはやってはだめだ。気軽にやれる金額ではじめよう。頭の整理整頓と優先順位さえ間違えなければ、低投資でだってできることはいっぱいあるのだから。
自分にできないことを知ることもまた成長だ。反対に、できることがわかれば、世界はどんどんと広がっていく。わたしらしいわたしの暮らしは、これからどんな風にころがるのか、わたし自身が一番楽しみにしている。
そしていつもこう思うのだ。ああ、お盆やGWやお正月に、特別料金をはらわなくてもいい温泉の出る家を家族ですきなだけ使えるのって、最高だなって。
新しい家族の生き方の一部になったこのぼろ屋を、私は4人目の家族のように愛している。
小説家。漫画の原作や脚本なども担う。2000年、『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。2024年4月には同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』を刊行し、話題に。
文/高殿 円、編集/小沢あや(ピース株式会社)
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