ミスドはなぜ「なんか、ちょうどいい空間」なのか 値上げしても業績絶好調、背景の「空間の魅力」

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特に、こうした「買い物のワクワク感」は、近年のDX化で失われつつある。モバイルオーダーでは目的の商品があらかじめ決まっていて、店頭ではそれを受け取るだけだ。ある意味、ウィンドーショッピングより前の、市場で商品を受け取っていた時代と同じである。時代が進んだ結果、購買体験としては、戻った面もあるのだ。

もちろん、ミスドにもモバイルオーダーのシステムがあり、こうしたDXに取り組んでいないわけではない。ただ、企業側が効率を考えDX化を進める中、「買い物のワクワク感」を感じさせるお店も必要だろう。その役割の一部をミスドは担っている。

ちなみに、こうした買い物におけるワクワク感は、例えば「びっくりドンキー」でも見られる。

びっくりドンキーの木のメニュー表
DX化によって減少中の、びっくりドンキーの木のメニュー表。しかし、消費者の声を受けて、紙のブックメニューが置かれるケースが増えている(編集部撮影)

同店では、木でできた大きなメニュー表がお馴染みだったが、それらがタブレットに変わった。しかし、同社によると、この変更に対しては「ワクワク感が減った」という意見もあり、紙のブックメニューが、タブレットと並べて置かれる例が増えているという。まさにこれも、アナログによるワクワク感を取り戻した一例だ。

いくらデジタル化が進むとはいえ、顧客は買い物や店舗空間でのワクワク感を求めている。ミスドはドーナツのウィンドーショッピングともいえる方法で、このワクワク感を高めているのだ。

ポストコロナ時代の店舗のあり方?

このようにミスドは、カフェとレストランを合わせたような「だらだらいられる空間」としての強み、さらには「ワクワクする店舗空間」という2つの「場所」としての強みを持っている。

コロナ禍が終わり、「リアル空間への揺り戻し」が起こりつつあるいま、こうしたアナログによる商品の魅力の訴求は大きな意味を持つ。まさに、そんなポストコロナ時代の店舗空間の一つのあり方を示しているのが、ミスドなのである。

ミスドの写真
業績が好調なミスド。ドーナツだけでなく、空間としての魅力が現代人に刺さっている…などと思いながら、筆者も本稿を執筆した(編集部撮影)
谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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