ユーロ発「世界危機」、「銀行破綻」で新局面、資本増強は焦眉の急

その第一歩となる「欧州金融安定化基金(EFSF)」の機能拡充策は、ユーロ圏最後の批准国となったスロバキアでいったん議会が否決。崩壊の危機に瀕したが、再採決で可決される方向となった。拡充策によって基金の規模が拡大し、危機国への支援にとどまらず、ユーロ圏の銀行に資本を注入したり、市場で国債を買い入れたりできるようになる。

ただし、拡大後の融資枠は実質4400億ユーロと、イタリアやスペインの支援まで視野に入れれば、到底十分とはいえない。かといって、すぐさま大幅に再拡大するのも難しい。そのため資金規模を変えずに、レバレッジを働かせる形で、実質的な枠を拡大する案が浮上。EFSFの銀行化(ECBの資金供給)という“ウルトラC”も取りざたされるが、実現の成否は不透明だ。

銀行への資本注入方法をめぐる対立も予想される。原則的には、1銀行が自力増資で対応、それが無理なら2各国政府が公的資金を注入、それでも不可能な場合、最後の手段として3EFSFの資金を注入、という3段階方式となる。ドイツはこの原則論を主張。一方のフランスは、EFSFの積極活用に前向きとみられる。仏系の銀行はギリシャとイタリア向け投融資額が圧倒的に多い。政府の公的資金投入額が膨らみ、フランス国債が最上級の格付けを失うことを懸念しているとされる。

実際、銀行への資本注入は財政負担の増大につながり、両刃の剣だ。フランス国債が格下げされれば、EFSF債の信用力も同時に低下し、危機管理スキーム全体の効力が落ちる。それがさらなる金融市場の動揺と危機連鎖を助長しかねない。

とはいえ、再査定を実施したうえでの銀行の資本強化、EFSF再拡充は、もはや焦眉の急だ。欧州危機の長期化は世界の実体経済をむしばむ。ユーロの中核を成す独仏が協調し、市場の期待に真に応える包括的対策を打ち出せるかが問われる。

(中村 稔 =週刊東洋経済2011年10月22日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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