東日本大震災で日本企業の“クラウド化”が加速、ビジネス市場に食い込むグーグル
3月11日の東日本大震災は、日本企業のIT戦略がクラウド化に向かって舵を切る大きな契機となっている。
これまで多くの企業が採ってきた情報管理の手法は、すべてのデータを自社で保有するサーバーに格納し、オリジナルに設計されたシステムで自らすべてを管理する、業界用語で「オンプレミス」というスタイルだった。これをクラウドという名の外部委託に切り替え、自社サーバーを縮小し、管理運用コストを削減する、という流れが定着しつつある。
もちろん、すべての業務システムをクラウド化するわけではない。基幹システムは社内サーバーに残し、メールシステムやカレンダーなどのセキュリティ管理が比較的容易なものを部分的にクラウドに移管する、いわばハイブリッド型が主流だ。
こうした需要の増加を受け、営業情報を統合管理するセールスフォース・ドットコムなど、クラウド事業会社への注目度が急激に高まっているが、その中で異彩を放っているのがグーグルだ。
グーグルは、検索エンジンとして知らない人はいないだろう。無料のメールサービスや写真共有サービスなど、コンシューマ向けサービスを基盤としている。ここ数年、一世を風靡した地図情報システムやGoogle Chromeでブラウザに参入するなど、多面的な展開が目を引くが、ビジネスエリアでも急速に力を伸ばしている。コミュニケーション用のパッケージソフト、Google Appsがそれだ。
Google Appsは、企業向けの有料サービスとして展開されている。基本的なサービス内容は、メールシステムやカレンダー、グループでの情報共有サービスなど、無料のコンシューマ向けサービスとそれほど大きな違いはない。
だが、複数メンバーの一括管理が可能なことに加え、容量やセキュリティレベルなどは大幅にグレードアップされている。拡張性が高く、少人数のオフィスから数万人単位の大企業まで適用が可能だ。既存システムとの統合が容易で、導入期間がテストランを含めて3カ月程度で済むのもメリットだ。