トヨタ、販売台数が不調でも最高益のワケ 理由は円安効果だけではない

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8月4日の決算説明会で質問に答えた大竹哲也常務(中央)

2015年度通期の営業利益見通しは前期比1.8%増の2兆8000億円。大竹常務の言葉通り現在の為替水準が続けば、2000億~3000億円の上乗せ要因となる。

ただ、中国や東南アジアなど、先行きを楽観できない市場も多く、諸費用は増加傾向にある。それだけに、通期の営業利益は3兆円を挟んだ攻防になりそうだ。

2013年度、2014年度と同様、2015年度も円安に支えられた最高益であることは間違いないが、体質強化も着実に進んでいる。今期の研究開発費の1兆0500億円と設備投資額1兆2100億円は、ともに過去5年間で最高額だ。

研究開発費はリーマンショック前のピークである2007年度の9588億円を2014年度で超えたのに対し、設備投資は2006年度の1兆4826億円に届いていない。これは、やみくもな量の拡大を戒める姿勢ともいえる。

10万台の増強と12万台の打ち切り

それでも1兆円を超す設備投資は膨大な規模だ。これらは車種や量の変更に柔軟に対応できる「伸縮自在ライン」の導入に充てられている。8月4日の決算発表と併せて発表された中国・天津の新ライン建設が、トヨタの生産に対する考えを象徴している。

既存工場の敷地内に590億円を投じ2018年央に年10万台の能力を持つ新ラインを稼働させる一方、別の場所にある年12万台の能力の老朽ラインは17年末までに生産を打ち切る。新ラインの稼働までに、生産能力を一時的に”落とす”ことをいとわないのも、量より質を重視するため。

無駄をそぎ落として効率性を高め、既存の能力を最大限に引き出すカイゼンを日々積み重ねる。販売減の中でも淡々と最高益を計上した今回の決算は、トヨタの着実な歩みを改めて示したといえる。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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