タイの大洪水が深刻化、再開が見えない日系工場

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ASEAN最大の生産拠点、タイでの記録的な洪水が日系企業の現地生産に多大な影響を与えている。10月上旬に日系企業が多く入居するタイ中部のアユタヤ県の工業団地でも冠水し、相次いで操業が停止。東日本大震災から回復へ動き始めた自動車や電機、精密業界は、新たな試練に直面している。

ニコンは生産9割集中

被害が甚大なのがニコンだ。一眼レフカメラと交換レンズの工場が6日に操業停止。同工場は一眼レフの約9割、レンズの約6割を生産する旗艦拠点で「メード・イン・タイランド」と記された製品を、全世界に輸出している。

ニコンでは工場の1階部分の浸水を確認したが、工業団地全体が退避命令下にあり、被害の詳細は不明。一眼レフの在庫は1カ月分程度で、操業再開が遅れれば年末商戦にも響く。JPモルガン証券の森山久史アナリストは11日付のリポートでワーストケースとして、「売上で300億円程度、営業利益で50億~100億円程度の影響がある」と指摘した。ニコンの2010年度の営業利益は540億円で、大きなダメージだ。

タイでは過去50年で最悪の洪水とされ、同国を縦断するチャオプラヤ川が氾濫。200人以上の死者を出すなど壊滅的な被害を出している。日系企業約150社が工場を構える工業団地ものみ込まれ、サプライチェーン(部品供給網)は完全に寸断された。

主力工場が浸水したフジクラ。世界シェア2位のフレキシブルプリント基板(FPC)をアイフォーンなど、スマートフォン向けに納入しており、全量をタイで生産する。他工場への振り替えにも限界があり、10月中旬に発売されたアイフォーン4Sの生産への影響も懸念される。

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