日産「99%減益」の真因、アメリカ事業に2つの課題 インセンティブ濫発とHV不在のダブルパンチ

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アメリカ市場での主力SUV「ローグ」。2024年モデルの投入が遅れた(写真:日産自動車)

決算発表の場でインセンティブ上昇について問われた内田誠社長は「われわれのインセンティブは業界平均レベルだと思っている。販売の質の向上を維持するという観点から、ほとんどはキャッシュ(値引き)ではなくお客様のローンの支援に当てている」と答え、特段問題視しなかった。

だが、日産がアメリカ市場で「インセンティブ漬け」になったのはこれが初めてではない。カルロス・ゴーン時代の拡大戦略の中にあった2016年にも1台当たりインセンティブ額が4000ドルを超えた。これを原資に現地ディーラーは安売りを濫発、日産車のブランドは大きく毀損した。

日産に16年間勤務し北米事業の経験もあるブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、「40年以上変わらない構造問題だ。日産には『こんなに売れるわけがない』とみんながわかっていても過大な計画を立ててボリュームを伸ばそうとする歴史がある。『できない』と言った瞬間、『君はいらない』と言われてしまう」と嘆く。

日産関係者によれば、「そもそも今回、ローグのモデルチェンジが遅れたのもストレッチした生産計画とブランド力低下によって旧モデルが売れ残ったのが原因。特殊要因があったわけではない」。

日産の在庫は、コロナ禍や半導体不足で供給制約が起きた2019年以降、減少していた。供給制約が解消された途端に無理して数を追う悪弊が顔を出した。コロナ禍が隠していた日産の構造問題が再び噴き出した形とも言える。

人気のHVを投入できない日産

足元での日産のアメリカ市場での苦戦にはもう1つ深刻な課題がある。ハイブリッド車(HV)の不在だ。

世界2位の自動車市場であるアメリカ市場では現在、電気自動車(EV)の販売が失速しHVの販売が伸びている。インフレや金利上昇で割高なEVが敬遠され、トヨタ車を筆頭に価格が手ごろで燃費もいいHV人気が高まっているためだ。

実際、HVのラインナップをそろえるトヨタ自動車やホンダはインセンティブを抑制しつつアメリカ市場での販売を伸ばしている。一方、4~6月の日産の販売台数は23万台。インセンティブを積んでなお前年同期比3.1%減と低迷する。

日産も「e-POWER」と名づけた独自HVシステムを持っている。走行にエンジンと小型モーターを併用する一般的なハイブリッドシステムと異なり、e-POWERはエンジンを発電のみに使い、起こした電力でモーターを駆動させて走るシリーズ方式のハイブリッド技術だ。

これまで日産はe-POWERをアメリカ市場で展開してこなかった。その理由を「EV投入を優先してきたため」と説明しており、2026年度に投入する予定としている。

だが、「e-POWERは高速域での燃費に課題が大きい。そのまま投入しても商品としての魅力が弱く、日本以外では売れない」(日産の元技術系幹部)という声がある。

道路環境の違いから、北米では高い速度域をキープして走る運転が多い。こうした高速一定走行はエンジンをそのまま駆動に使った方が高効率で、エンジンで発電しその電気でモーターを動かすe-POWERはむしろ燃費が低下するのだ。

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