日産「99%減益」の真因、アメリカ事業に2つの課題 インセンティブ濫発とHV不在のダブルパンチ

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「海外で売る気なら、例えば三菱自動車のアウトランダーのように高速域ではエンジン直結で走行する機構を入れるか、他社のハイブリッド技術を受け入れる必要がある」(同元幹部)

日産は、2000年代にトヨタのハイブリッドシステム(THS)の技術協力を受けて、HVの「アルティマ ハイブリッド」を投入したこともあるが、「ゴーンさんはトヨタからもらうことに我慢ができなかった」(日産幹部)。EVを優先する戦略を進めたこともあり、1世代でトヨタとの協業関係は終わった。

ホンダとの戦略的パートナーシップの第1段として次世代の車載ソフトウェアの共同研究契約を締結。今後検討する協業領域として、車両の相互補完のほかにもバッテリー領域、eアクスル領域、国内エネルギーサービスや資源循環領域での協業を検討している(撮影:尾形文繁)

ホンダとの戦略的パートナーシップでは、協業領域として車両の相互補完も打ち出している。「まだ細部の詰めが残っている段階であり、具体的なモデル名などの公表は差し控えるが、ガソリン車やEVなどの相互供給を検討している」(ホンダの三部敏宏社長)としている。

再拡大戦略に走る日産

日産は北米事業の今後について、「(在庫適正化などの)課題に対して明確な対策を打ち、新型車の投入を進めることで業績を回復していく」(マーCFO)と説明する。この夏に新型「キックス」などを投入するが、競合他社も新型車を投入する中でどこまで市場競争力があるかは不明瞭だ。

今夏に北米に投入する「新型キックス」。インセンティブに頼らず販売をテコ入れできるか(写真:日産自動車)

日産は今年3月に2026年度までの中期経営計画「The Arc」を公表、2023年度比で100万台増販を掲げ、再び販売台数の拡大を目指している。台数が伸びるのは悪くない。だが、重要なのは質を伴った拡大だ。

数々の構造課題を解決せずに拡大戦略を掲げ続ければ、日産の傷口はさらに広がりかねない。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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